2017年2月24日金曜日

カンファランス雑考 ~ピア・カンファランスにおける関係性は?

 生徒同士のカンファランス、つまり、ピア・カンファランスについて、私にはイメージしにくい部分があります。

 特に、現時点では、二つのことが疑問です。

1)ピア・カンファランスの関係性は、何に例えると分かりやすいのか?

2)ピア・カンファランスの多くの事例が、ライティングであり、リーディングで少ない印象があるのはどうしてなのか? 

 2)に関しては、ライティングの推敲や校正の段階であれば、ピア・カンファランスは、特に一斉に行うには取り組みやすい、という点があるようには思います。

 もっとも、カンファランス自体は、書くこと・読むことの様々な過程で使われることを考えると、「今日までに下書きを仕上げる、今日は一斉にピア・カンファランスを行う」という使い方だけでは、何か違う、というか、なんだか勿体ない印象を受けます。

  2)についても、考え続けたいと思っていますが、今日は1点目、「ピア・カンファランスは、何に例えると分かりやすいのか?」を考えます。

 ピア・カンファランスではなくて、教師によるカンファランスの場合、例えば、「医者と患者」や「親と子」の比喩が使われることがあります。

 たとえば、 『読書家の時間』(新評論、2014年)の「評価」の章(161ページ)には、以下のような記述がありますが、それがカンファランスにも生きていると言えます。

 「このような評価の考え方は、医師のカルテに似ています。医師は患者を一同に集めて、一斉に同じ治療を施すことはありません。一人ひとりの症状を確認し、どのように回復したいのかを聞いてから、その患者にあう助言や治療法を提案していきます。そして、その一連のやりとりをカルテに書き込んでいきます」

 中学校レベルの優れた実践者、ナンシー・アトウェル氏は、自分の子どもが5歳の時に「靴ひもの結べるようになりたい」、と言ってきた時のことから、「引き渡すこと、手渡し、譲り渡すこと」という意味のある handover という単語を使って、知識やスキルを生徒に教えて、できるようにすることを説明しています。★

 医師にしろ、親にしろ、はっきりしているのは、教える人と教えられる人との間にある、知識やスキルの差です。

 一方、ピア・カンファランスではどうなのでしょうか? 人数の多い日本の教室ではピア・カンファランスが大切!と考えている『作家の時間』(新評論、2008年)では、ピア・カンファランスというセクションを設けて6ページにわたってその様子を述べており(68~73ページ)、その中には次のような文もあります。

 「そして、ピア・カンファランスの最大のメリットは、お互いに読み合うことによって、子どもたちの間に一緒に高め合っているという学び合いの気持ちが生まれることです」(68ページ)

 このような学びは何に例えればいいのでしょうか? 「ライバル同士の切磋琢磨」でもないし、「仲良しグループ」でもないし、複数で一つの目標に向かう「チームワーク」でもないし。。。

 ピア・カンファランスにおける関係性を例える、よい例や比喩がさっと思い浮かばないのは、自分を振り返るとき、それぞれにピア・カンファランス的に、学び合い、高め合うという関係性が少ないからかもしれません。どうしても、知識やスキルに差(「多様性」というよりは、埋めるべき「差」です)があるところでの学びが多いのです。

 逆に言うと、学ぶ人同士の、知識やスキルの差を、一方的に埋めるためではない関係性を、子ども時代に体験できることは、とても大きいのかもしれません。

 また、先生は学びのいいモデル、と考えると、先生自身がピア・カンファランス的な学び合いを経験することも大切なはずです。

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 そこで教師がピア・カンファランス的な関係性の学びを経験できる方法は?と考えてみることにしたところ、とりあえず、二つ、頭に浮かびました。

1)上下関係がなく、気持ちよく共有やコメントが出しあえるような、授業研究やライティングのグループ。できれば、コメントされる人とコメントする人とに分かれるのではなくて、それぞれが両方の立場を経験できるようだと、さらにいいと思います。

⇒ 一つの試みとして、 ここ何年か、数名の先生と「閉じたブログ」(メンバーしか見れないブログ)」で、お互いの実践を振り返ったり、情報を交換したりしています。いいフィードバックができているのか等、まだまだ課題はありますが、でも、この関係は、うまく運用できると、よいピア・カンファランスの関係性に近いのかも?と思います。

2)ブッククラブ体験

 ピア・カンファランスの関係性の例えとして、「医師と患者」でも「親と子」でも、また「ライバル同士の切磋琢磨」でも、「仲良しグループ」でも、「チームワーク」でも ないと思うと、「ブッククラブの参加者」が近いように思いました。
 
 それは、ブッククラブでは、「知識とスキル」の明らかの差を、一方的に埋める時間ではなく、違う視点が提供され、みんながその学びに集中しているからです。もちろん、自分の必要(自分の尋ねたいこと)をはっきり述べて、助言を求めることもあります。

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 ピア・カンファランスをより深く理解するためには、まずは自分自身がピア・カンファランス的な学びの成功体験を増やしていくなかで、新たに見えてくるものもありそうに思っています。

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★ handover ですが、Nancie Atwell著のIn the Middle: A Lifetime of Learning about Writing, Reading, and Adolescents, (Heinemann, 2015) の 14-15ページ。それ以外の箇所でもこの概念はでてきています。

2017年2月17日金曜日

斎藤美奈子の「考え読ませ」に惹かれた夜

    斎藤美奈子さんの本は、『文学的商品学』(紀伊國屋書店、2004年)『文章読本さん江』(ちくま文庫、2007年)をはじめとしてたくさんありますが、いつも驚かされています。うすうす感じてはいたのですが、この人の本が面白いのは、取り上げられる本や情報の解釈そのものはもちろん、それぞれの本や情報の捉え方・扱い方が卓抜だからです。そこでは本の読み方がきわめて具体的に示されていますが、それは、「優れた読者の読み方の「考え聞かせ」のようなものなのです。
 「考え聞かせ」(Think Aloud)とは何か。『理解するってどういうこと?』のなかで、「読み聞かせをしながら、途中途中で自分が読みながら考えたことを紹介する」ことであるとされています。そうです。斎藤さんの本では、常に、その優れた自分の本の捉え方や反応の仕方の考え聞かせ(本だから「書き聞かせ」、い、いや、「考え読ませ」といった方が正確なのかもしれません)が行われるのです。
 その「考え聞かせ」(「考え読ませ」?)の達人が、なんと文庫本の「解説」を取り上げたのですから...、面白くてたまらない・・・のではないかと思って手に取った、読み始めて本当に面白かった本が、『文庫解説ワンダーランド』(岩波新書、2017年)です。夜っぴいて読みました。
  たとえば、赤川次郎『三毛猫ホームズの推理』(角川文庫)の辻真先さんの「解説」について、次のように書かれています(〈 〉内は齋藤さんによる引用)。

〈お待たせしました。/記念すべき三毛猫ホームズシリーズのはじめての文庫版であります。/(略)なんの誇張もありません。探偵小説の歴史をひもといても、動物が探偵役をつとめるなんて例は、おとぎばなしの世界でもないかぎり皆無といってよろしいでしょう〉
 以上が書き出し。このシリーズがいかに画期的かを記した後、辻は続ける。
〈一般のミステリー大好き人間ならまず以て、期待するのは、意外な犯人のはず〉
〈では作者はホームズ第一作のために、どのような「意外な犯人」を準備したか!/実は、ですね。/…………/…………/えへへ、期待させて申し訳ない。/解説から読みはじめる読者のために、ここで凶悪犯人をばらすのはやめておきます。〉〈その代わり、といってはなんですが、よりお目をとめていただきたいのが「意外なトリック」です〉
 ここで解説はミステリーにおけるトリックのしくみを解説し、〈「ホームズ」第一作には、嬉しいことにこの密室が出てまいります〉と続ける。
〈えい、内緒でトリックをばらしちまいましょう。/実は、ですね。/…………/…………/えへへ。ぼくがばらすわけないじゃありませんか。(略)/むしろご注目いただきたいのが、「意外な伏線」であります〉。そしてまた同じオチ。
〈さてその伏線とは/………/すみません。お察しのとおり、内緒、内緒〉
 この解説のどこが優れているかといえば、ホームズシリーズの新しさと正当性を紹介しながら、同時に「ミステリーの楽しみ方」を初心者のために噛み砕いて解説しているということだ。(200~201ページ)

 これは、辻さんの「解説」の優れた点を取り上げた部分ですが、斎藤さんはこのような感じで、文庫解説を読み解いていくのです。1ページほどの分量で、辻さんの文庫解説の勘所を「考え読ませ」しているのです。斎藤さんの選んだ引用を読み、またそれについての斎藤さんの思考をのぞき見ることができるのです。そしてこれは、本についての紹介の仕方についての「考え読ませ」でもあります。
 当然、解説にはいいものもわかりにくいものもありますから、次のようなことも書かれています。

 日本の現代文学の解説には、しばし次のような特徴が見られる。
①作品を離れて解説者が自分の体験や思索したことを滔々と語る。
②表現、描写、単語などの細部にこだわる。
③作品が生まれた社会的な背景にふれない。
 同人誌的の合評ならいざしらず、解説としては落第だろう。このようにして作品は歴史や社会と切り離され、「ねえねえ、どうなってんの!?」な作品のリストが増える。
 悪習を絶つ方法は簡単である。第一に、五年後、一〇年後の読者を想定して書くこと.第二に、中学校二年生くらいの読者を対象に書くことだ。(145~146ページ)

 こうなると、解説だけにとどまらない問題ですね。友だちに本を薦めることが皆さんもあると思いますが、どうでしょうか? ①から③のようなことはないですか? 少なくとも五年、一〇年後の未来の読者を想定してみると、広がりが出てきます。「中学校二年生くらい」の聞き手(読み手)によくわかる言葉で書こうとすれば、自分でもよくわかっていない部分を再読・三読しなくてはなりません。そうするなかで、読者の内面も磨かれていくのです。どうですか? 早速今日の読書ノートで斎藤さんの言うことを確かめてみては?

2017年2月10日金曜日

中学校でのRWの実践紹介


中学校でのリーディング・ワークショップ(RW)の実践報告を、新潟の吉澤先生が送ってくれましたので紹介します。
(この報告から分かるように、すべては教師の選択です。そうなんです、教師は選択をもっています!)

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RWって本当にすごい! 本の力ってすごいなあと思いました。
この先、どうやってRWを進めていこうかとわくわくしています。

研究授業の要項を作っているとき、RWの定義として、「読書家になる体験を通して読むことを学ぶ」というのがそれほどしっくりこなかったのですが、やってみて、子どもたちが読書家になっていくのを見ていたら、このことか! と体験することで理解できました。

それから、「反応を基にした読み」がすごくよかったです。
例えば、付箋をつけながら読むよといっても実際やったら、どういうふうに書いたらいいかわからなかった。
それを振り返りに書くと、こんなふうにうまく書いていた人がいるよと次のミニ・レッスンで教える。
そうすると、あー、そうかと思って、次にはうまく書ける人が増えていく。
さらに、共有が今ひとつという状況があると、うまくやっていた班の方法を次のミニ・レッスンで紹介する。
実際、やっていた方法、付箋のページを開いてみんなに見える形で本を広げる。
そして次の付箋のページを開いて次の人に本を渡す。
それを見せてやると、共有の時間にちゃんとそれをやっている班が増えていく。
子どもの反応に対して教師が教える内容が変わっていく。
でも、それは生徒にとって今必要なことだから、ちゃんと聞こうとする。
うまくいくとほめられる、のいいサイクルができあがる。
だから、生徒も教師も楽しくなっていくんですね。

私たちのRWは絵本(4時間)から始まって、ミニ・レッスンは
○本を読むとどんないいことがあるか。
○先生の読書のオススメ・アイテム(読む場所や読書アプリなど)。
○付箋はこんなふうに書く。
○共有の時間はどうしたらいいか。
○いい話し合いとは?
などを生徒の振り返りを紹介しながらやりました。

『読書家の時間』では、導入を10時間位でやっていて、やはり軌道に乗るまではそのくらいが必要だなと思いました。
ところが、私たちは教師側の都合で詩の授業をやらなければならなかったので、生徒はもっと絵本を読みたかったのに、詩に切り替えたので、生徒の抵抗が高くなってしまいました。
読みたいものを読ませるのがRWなのにと思いながら、どうしようかと焦りました。
でも、振り返りを読んでみるとかなり読んでいる子たちは詩も新鮮でおもしろかったというのがあったんです。
そこで、絵本と詩の紹介文を書くというのをやってみたのです。
紹介文を書くときに前半には、内容を簡単に紹介するのと、後半には「質問する」と「推測する」の言い回しを入れるという形でモデルを示してやってみたところ、生徒たちが非常に上手に書いてくれました。
それを色画用紙に詩と共に貼って、展覧会みたいにしたところ、詩は絵本と違って何を言いたいのかよくわからないと言っていた子たちもいろいろな詩を見始めたんです。
その詩の展覧会の中から班ごとに読みたい詩を探して、「質問する」と「推測する」で読んでみるというのを公開授業でやりました。

まず、班ごとに読みたい詩を探すときにどんな詩に決まるのかが結構心配だったんですが、何も心配する必要がありませんでした。
かなり読みごたえのある詩を選んできたのです。

—  1班 「くり返す」 谷川俊太郎
—  2班 「あなたがあなたである限り」  にらさわあきこ
—  3班 「短い人生もある」 日野原重明
—  4班 「オランウータン」 やなせたかし
—  5班 「ロボット」 よづき
—  6班 「地雷のあしあと」
—  7班 「オランウータン」 やなせたかし
—  8班 「くり返す」 谷川俊太郎

谷川俊太郎とやなせたかしの詩を2つの班が選んできました。

公開授業のときは、生徒たちもがんばっていたのだと思いますが、前の時間に班ごとに読みの工夫を考えて、発表しただけなのに「質問する」「推測する」だけで相当読めていました。
よく考えた付箋がたくさん貼られました。
こんなに子どもたちの力だけで読めるのだから、教師が余計な説明なんてする必要がないなと思いました。

この時間の生徒の振り返りを紹介します。

○今日は、「くり返す」について、意見を出し合った。他の班の意見は良いものから不思議なものまでいろいろあり、おもしろかった。私もがんばって意見を出したけど、もっとすごい意見を出している人がたくさんいて、すごいと思った。
○今日の授業では、また前回の授業と同じくらい、いや、それ以上のいろいろな人の考えを知ることができた。ただ詩を読むだけで、私が感じた感想や想像でいつもは終わってしまうのに、今日は自分の想像のあとにいろいろな人の想像が見れてそういう考えもあるのか!と思ったりした。とくに7班の人の考え方は私の考え方とはまるでちがっていて、質問や推測を見るのが楽しかった。
○今日はおもしろかった。詩でこんなにも質問や推測が思い浮かぶなんてびっくりした。
○今回の授業では、詩の質問と推測を考えたことにより、詩のおもしろさが伝わりました。他にもこの質問と推測を考えているうちに自分も夢中になったので、またしたいです。


以上は、11月21日に、吉澤さんが書いてくれていた報告でした。
公開の授業研究でやらなければいけないという矛盾を克服しながらの実践でした。
さらに、追伸を10日ほど前にもらいました。

実は、先週からまたRWをスタートしました。
教科書でやらなければならないのは、あと小説を一つくらいになったので、週1でやることにしました。
久しぶりにやるので、生徒3人の本の紹介からやりました。
振り返りにそれぞれの紹介のいいところやどんな話し方が伝わりやすいかを書いた子どもが多かったので、2時間目のミニ・レッスンは、どんな話し方が伝わりやすいかを生徒の振り返りから出てきた、声の大きさ・間の取り方を話題にしました。
振り返りを基に次のミニ・レッスンが決まってくる感じが、体験に理論をつけていく形で、いいなあと思っています。

また楽しくなりそうです。

2017年2月3日金曜日

新刊『好奇心のパワー』紹介


 リーディング・ワークショップ(読書家の時間)とライティング・ワークショップ(作家の時間)の核といえるのが、カンファランスです。★
 これらが、オーストラリアに最初に導入された時は、カンファランス・アプローチという名称だったことからも、そのエキスを選りすぐった名称だったとも言えます。
 と同時に、カンファランス的な教え方というか接し方をこれまでに体験していないこともあって、日本での導入に際しては、その難しさを口にする教師が少なくありません。
 そういう人たちに、オススメなのがこの新刊の『好奇心のパワー』です。



 具体的に、カンファランスをする際の柱が、「好奇心のスキル」として詳しく説明されています。(使われている事例は、RWやWWの実践ではなくて、職場や家庭でのやりとりですが。)

  ① 「今、ここ」に集中し、相手への好奇心をもつ
  ② 聞き方を選択し、積極的に聴く
  ③ 相手への好奇心を示すオープンな質問をする
  ④ 相手を理解し続ける努力をする

④の中には、適切なフィードバックや提案(アドバイス)なども含まれます。それが、相互により良く理解するために、大きく寄与しますから。(要するに、質問するばかりが理解なのではない!! しかし、その提示の仕方がポイントです。相手が選択できる形で提示するのか、それとも指示・命令的に提示するのか・・・・)

 この①→④のサイクルを回し続けることで、「好奇心のスキル」が身につくと同時に、カンファランスが上達します。両者はイコールな関係です。(ちなみに、スキルですから、誰でも身につけられます。)

 本の中では、古いコミュニケーションの取り方と新しいコミュニケーションの取り方の比較もされています。(それを簡潔にまとめているのが、表1です。)
  なんと、その一番目が一斉授業に代表される「伝える/教える」モードであるのに対して、21世紀以降に求められるのは「問いかける」になっています。
 他の4つの項目も、見覚えがあるものばかりではありませんか?

ぜひ、「好奇心のスキル」を身につけて、あなたのカンファランス力をアップするだけでなく、職場での関係、家庭での関係、教室での子どもたちとの関係を改善してください!(この本は、後者を目的に書かれたものです。)

◆例によって、訳者による割引注文を受け付けます。

1冊(書店およびネット価格)2160円のところ、
訳者割引だと   1冊=1800円(送料・税込み)です。
5冊以上の注文は 1冊=1700円(送料・税込み)です。
本は、2月8日発売予定です。
ご希望の方は、冊数、名前、住所、電話番号を
pro.workshop@gmail.comにお知らせください。



★ カンファランスは、RWやWWにとってのみ核なのではなくて、本来、教える・学ぶという行為すべて(=すべての教科指導)で核なんだと思います。それが日本においてはいつの間にか(というか最初から?)無視されていただけだというか・・・
部活指導も、です。
要するには、人間関係が伴うものすべてにおいて。
(なお、質の高いコーチングとカンファランスは、同じです。『リーディング・ワークショップ』の第6章「読み手へのコーチングとカンファランス」に書いてあるように。)



2017年1月27日金曜日

「これから読む本、順番待ちの本」

 RWでは、以下の引用のように、子どもたちに、「これから読む本」を考えておく(準備しておく)ことの大切さを教えることもあります。

 「ある本を読み終わるまではかなりいいペースで読んでいたんだけど、次に読む本を探している間は読むのが中断してしまうんだよね。こういうことがないように、『これから読む本』とか『順番待ちの本』をあらかじめ決めておいて、読み終わったあとに次の本をすぐにスタートできるようにしている人もいるんだよ」(『リーディング・ワークショップ』176ページ)

 そこで今回のRWWW便りは、「教師も自分の読書生活を豊かに!」ということで、「次に読みたい本」とその理由を、何名かの人に書いていただきました。(最後の1冊は、私が書きました。)

 紹介のラインアップは以下です。
 
1. 2つの作品を読んで、さらに読んでみたくなった浅田次郎、次は『一路』
2. 折りにふれて読んできた田中克彦。次は『田中克彦自伝』
3. 民間企業以上に、ブラック残業(?)が多い日本の学校という職場で、本当に必要なことは何かを考えさせてくれそうな期待感のあるデービッッド・アトキンソンの『新・所得倍増論』
4. 地元の図書館で「現在の予約1117件」だった宮下奈都の『羊と鋼の森』

 <2つの作品を読んで、さらに読んでみたくなった浅田次郎、次は『一路』>

 職場の人から浅田次郎の作品をすすめられ、読んでみました。1冊は『蒼穹の昴』は清朝末期の時代の中国の話。皇太后が出てきます。 これは、なかなか読み応えのある作品でした。 読み終えた後、中国の歴史についてもっと知りたくなりました。
 もう1冊は、『壬生義士伝』新選組の吉村貫一郎という実在の人物について描かれた小説。 おもしろいと思ったのは、この小説の作りです。 吉村貫一郎本人の視点で書かれた部分と、貫一郎を知る複数の人の語りの部分が 交互に書かれています。その事で、吉村貫一郎という人物の生き方・考え方がより鮮明に浮かび上がってくるようになっています。
 二つの作品を読んで、浅田次郎の作品をほかにも読んでみたいと思いました。次は『一路』を読もうと思っています。

<折りにふれて読んできた田中克彦。次は『田中克彦自伝』>

 言語学は大学の教職課程で勉強しただけであまり魅力を感じていませんでしたが、教員になってから知人に薦められて読んだ田中克彦著『ことばと国家』(岩波新書)が面白かったです。それ以来、田中克彦氏の著作を折に触れて読んできました。『ことばの差別』『国家語をこえて』『法廷にたつ言語』『差別語からはいる言語学入門』『チョムスキー』『ノモンハン戦争』など。「たたかう言語学者」と言われてきているようです。そんな氏の自伝『田中克彦自伝:あの時代、あの人々』が出ました。生い立ちから大学時代までを扱ったものですが、読むのが楽しみです。

<民間企業以上に、ブラック残業?が多い日本の学校という職場で、本当に必要なことは何かを考えさせてくれそうな期待感のあるデービッッド・アトキンソンの『新・所得倍増論』>

 先日、日本電産の永守重信社長がラジオのインタビューに登場しました。年間365日働き続けるモーレツ社長が、時間外勤務廃止に取り組んでいるということ。電通問題などで、多くの企業が、労働時間の短縮に取り組もうとアピールしていますが、永守改革では、単なる時短ではなく、「生産性」改革に挑んでいるとのこと。

 そんなおり、目にとまったのが、デービッッド・アトキンソンの『新・所得倍増論』(東洋経済新報社)。この本のキーワードは「生産性」なのだそうです。技術面でも労働意欲の面でも世界一流と、自画自賛してきた日本。その「昭和の常識」に挑んだ意欲作のようです。GDP、輸出額、研究開発費どれをとっても世界上位の日本。しかし、それを国民一人当たりに換算するとかなり下位に位置するのだそうです。筆者の見解によると、スペインやイタリアより低い生産性なのだそうです。いったい何が問題なのでしょうか?ぜひ、知りたいと思いました。

 民間企業以上に、ブラック残業が多い日本の学校という職場。本当に必要な仕事は何なのか?今やっている多くの業務は、本当に子どもたちのためになっているのか?アトキンソンの指摘する生産性の問題と何か関係があるのではないか?何かヒントが得られるのではないかと期待しています。


<地元の図書館で「現在の予約1117件」だった宮下奈都の『羊と鋼の森』>

 知人のブログで紹介されていた宮下奈都の『羊と鋼の森』を地元の図書館で検索したところ、複数冊あるのがすべて「貸出中」。それで予約をいれたところ、「現在の予約数 1117件」と出てきました。1000件を超す予約のある本に予約を入れたのは初めてです。以前、上橋菜穂子さんの『鹿の王』が600ぐらいの予約数で1年ぐらい待ったので、今回の本は2018年に読むことになるのかもしれませんが、楽しみです。

*****
  
 それぞれの「次に読みたい本」を見ながら、以下の引用を思い出しました。

 「私たちが読むという経験を広げて深めることは、読むことを教えるときに活きてきます。しかし、教師が本を読む最も大切な理由は、楽しみながらオンを読むことで教師自身が元気になったり、励まされたり、慰められたりする姿を子どもたちに見せることができ、本を読むとはどういうことなのかを教えられるからです」(『リーディング・ワークショップ』78ページ)

 2016年度もあと約2か月、何かと忙しい時期かと思いますが、「次に読みたい本」も増やしていきたいです。

2017年1月21日土曜日

理解するための語彙力と解像度を上げる


思考を深める、とよく言われますが、考えていることをどのような言葉を使って表現するのかということは常に大きな問題です。言語と思考の関係をどのように考えていけば、人に伝わる言葉を生み出せるのかという、表現者にとってたえず大切な問題に正面から切り込んだ本が、梅田悟司さんの『言葉にできるは武器になる。』(日本経済新聞出版社、20168月)です。
  梅田さんは繰り返し「自分の内なる言葉」を持つこと、それを掘り下げていくことが、表現する人として忘れてはならない大切なことだと言っています。

結論から言えば、内なる言葉を磨く唯一の方法は、自分が今、内なる言葉を発しながら考えていることを強く意識した上で、頭に浮かんだ言葉を書き出し、書き出された言葉を軸にしながら、幅と奥行きを持たせていくことに尽きる。64ページ)

コピーライターらしく、主張を簡潔に示した言葉で各節が締めくくられています。「とにかく書き出す。/頭が空になると、/考える余裕が/生まれる。」(91ページ)とか「自分の/可能性を/狭めているのは、/いつだって/自分である。」(134ページ)というぐあいに。何か、私自身に宛てられているような気にさせられる本です。文章を書くことに少しでも苦労したことのある人であれば、その人の内側の苦労を言い当てられたような思いを抱く本だとも言えます。
  『理解するってどういうこと?』の「資料G」には「読書感想文に代わる方法」として「書くことで考えたことを共有する方法」「描くことで考えたことを共有する方法」「話し合うことで考えたことを共有する方法」「演じることで考えたことを共有する方法」があげられています。読みっぱなしにせず、読むことが好きになって、読む力がついていくための方法があげられているのですが、梅田さんの方はそのときに読者の「内なる言葉」を「外」に出す知恵をたくさん示しています。
  感想を話し合うにしても、感想文を書くにしても、その「自分の内なる言葉」を言葉にできるかどうかが鍵となります。「自分の内なる言葉」を豊かにしていくということはもちろん大切なことです。これがなければ先に進むことができません。
  一つ一つの言葉がいちいち心に響く本なのですが、それはたとえば次のような考えでつらぬかれているからなのでしょう。

大切なのは、内なる言葉の存在をはっきりと認識し、内なる言葉の語彙力と解像度を上げることである。その上で、外に向かう言葉を鍛える方法を知ることにこそ意味がある。
  話すべき内容である自分の思いがあるからこそ、言葉は人の心に響いたり、人の気持ちを動かすことができるようになる。どう言うか、どう書くかではなく、自分の気持ちを把握した上で、自分の意見をどう伝えるか、どう書ききるか、でなければならない。145ページ)

「自分の意見をどう伝えるか、どう書ききるか」? そのために「言葉のプロが実践する、もう1歩先」とはどのようなものなのか。その見出しだけを引用させていただきます。
   たった1人に伝わればいい〈ターゲッティング〉
   常套句を排除する〈自分の言葉を豊かにする〉
   一文字でも減らす〈先鋭化〉
   きちんと書いて口にする〈リズムの重要性〉
   動詞にこだわる〈文章に躍動感を持たせる〉
   新しい文脈をつくる〈意味の発明〉
   似て非なる言葉を区別する〈意味の解像度を上げる〉

それぞれがどういうことなのかということについては、本書(204ページ~252ページ)をお読みください。たとえば、①では「平均的」な読者というものは存在しないという言葉に納得し、たった一人に向けて書きながらも、そのことを対象化していくことが重要だという言葉に納得しました。⑤の「動詞にこだわる」で彼が言っているのは、「体験の幅」を広げることで、「内なる言葉」を伝えるための「動詞の幅」が広がる、ということです。また⑦では、「意味の解像度を上げる」ために、たとえば「解消と解決」「性質と本質」等の「似て非なる言葉を区別する」ことが必要だ、とも書かれています。
  これらは、コピーライターという言葉のプロだからこそ気づくことのできることなのかもしれませんが、本書に示されている〈方法〉を使ってみることで、本を読みながらたくさんの「自分の内なる言葉」をたくわえることができるようになり、それらを人に伝えられるようになるのではないでしょうか。それは、日常の諸事をより鮮明に「わかる」ようにするための処方箋でもあります。

 

2017年1月13日金曜日

自分が読んでよかったと思える本を紹介し合えるクラスづくり


子どもたちに学期に終わりにアンケートをとると、いつも一番人気はクラスメイトによる本の紹介です。そのコツを、7年生の声を中心に紹介しながら、お教えします。

10 計画が大事
 「みんなの前に立つ前に、何を話したらいいか、知っていないといけない」「言いたいことを書き出しておくと助けになる(でも、棒読みはダメ!)」本のタイトル、著者、ジャンル、簡潔な要約、そして自分の感想は、不可欠の要素。でも、以下を読んでいただけると、他にもあります。
9 最後までしっかり話す
 「最後で台無しにしてしまっては、自分が紹介した本を読みたくなる人はいません」
8 しっかり聞いている人の目を見て
 「いい本の紹介のポイントは、目を見て話すこと。誰の目を見ていなかったり、用意した原稿を読んだりしていては、こちらの熱意が伝わらない」
7 短く、楽しんでもらえる内容で
 「30秒じゃ身近すぎるし、5分も話していたら、飽きちゃう。2~3分がいいところ。その中に伝えたいことを盛り込む。それだけじゃなくて、楽しんでもらえるようにする」
6 珍しい本を紹介する
 「誰もが知っている本を紹介しても、喜ばれない」 ~ でも、たまにはそういう本でも、違う視点に気づいてもらいたいような時は例外です。
5 本の一部を読むのはインパクトがある
 「本を代表するような文章を短く読むことは、その本がどんな本で、どういうふうに書かれているのかを生に伝えるいい方法」
4 言い過ぎないで、もったいぶって
 「?マークが聞いている人たちに残った方が、本を手にとってもらえる可能性は高まる」
3 プレゼンテーション
 「聞いている人たちに受け入れられる形で表情豊かに話す」 ~ 主役は、聞く人たちで、紹介しているものではないことをわきまえる!!
2 一冊だけでなくて、本のつながりを強調する形で、複数の本を紹介する
 読み手たちは常にいい本を探しているので、関連する複数の本を紹介するとありがたがられる!
1 本のおもしろさが伝わるように
 「その本への紹介者の思いというか、こだわりというか、本の面白さが聞き手に伝わることが、その本を読んでもらうための最大のポイント」

以上を参考にしながら、クラスの子たちが相互に本を紹介し合える時間をひんぱんに作ってください。★それが、子どもたちが読みたくなる最も効果的な動機づけになるはずです。教師よりも、教科書よりも、何よりも。
英語ですが、このクラスの子どもたちの本の紹介を張り出したものを紹介します。
https://padlet.com/katsok/ncte

★ ここで紹介されたコツは、フォーマルな紹介の仕方ですが、これらの要素の多くはインフォーマルに紹介し合う際にも当てはまるものがほとんどだと思います。その意味では、教師がしっかりモデルを示すところから繰り返し練習することで、スキルとして紹介の仕方を身につけると、ほかのプレゼンをするときに応用できるまでになります。これは、とても大切なスキルではないでしょうか?