2010年7月30日金曜日

自分のメンター(師匠) となる作家

<コンピュータの設定が変わったために、コンピュータの苦手な私は、今日はこのブログへの書き込みに苦労しています。もし、すでに同じようなメールが配信されていましたらすみません。>

 前回のWW便りには、ミニ・レッスンの情報源としていくつか挙げ、その中の一つと
して「本」があることを書きました。

 今日はそれについて少し補足したいと思います。

 ライティング・ワークショップにおける本の大切さは、あちこちで書かれています
が、特にこの点についてしっかり書いてあるのが、この前から何度かWW便りで紹介し
たShelley Harwayneさんが書いた 
Lasting Impressions という本です
(Heinemann, 1992)。1学期、2学期。。。と学期が進むにつれ、ライティング・ワー
クショップにおける本の役割も変わってくる(2ページ)と言っています。

 いろいろな効果があるのですが、その中の一つとして、「自分のメンター(師匠)
となる作家・書き手が存在する」ということがあります。

 
Units of Study for Primary Writing: A Yearlong Curriculum というライティン
グ・ワークショップのシリーズ本があり、その5冊目が
Authors as Mentors です
(Lucy Calkins & Amanda Hartman著、Firsthand Heinemann, 2003).  

 ☆ これはミニ・レッスン、カンファランス、共有案が提示されている、実践者に優しい
本です。☆

 この 
Authors as Mentors (直訳すると、「メンター(師匠)としての作家」)と
いう*「ユニット」案を見ていて、思ったことをいくつか紹介します。

 *ユニットというのは、一つのテーマに基づいた一連の学びです。『リーディング・
ワークショップ』(ルーシー・カルキンズ著、新評論、2010年)の「編訳者まえ
がき」では、ユニットについて「子どもたちに達成してほしいことをどのような順番
で、どのくらいの期間取り組んだらいいかを考え、その内容と方法を決めていく」
(4ページ)と説明されています。

 私が
Units of Study for Primary Writing: A Yearlong Curriculum の5冊目、
Authors as Mentorsで いいなと思ったのは、最初は子どもたちに取り組みやすい作家
を選び、そこからその作家の書くプロセスや作家の技を学び(1~71ページ)、そ
の学びを活かして、新たな作家を自分のメンターにできるように学ぶという点です
(95~116ページ)。

 メンター・テキスト(自分の師匠となるような本)という言い方も使われています。

 例えば新しい作家の本を手にとり、その作家が行っていることに気づいたり(95-
101ページ)、それを使えるようにサポートしたり(103-110ページ)、自分の作品をよくするために、自分の必要に応じてメンター(である作 家、つまり本)に助けてもらう(111-116ページ)ということもできます。

 子どもたちにとって、ある作家の技に気づき、それを見習いたいと思えそうな、そ
んな本を教師は(できれば、いろいろと)知っておく必要があります。ですから、教師にとっては、自分の教えている子どもたちを思い浮かべながらの、夏休みの読書の楽し み?が増えますね!
 

2010年7月23日金曜日

ミニ・レッスンの情報源(を豊かにする) 

 夏休みに入った学校、夏休みに入るまであと何日か残っている学校など、地区によっていろいろだと思います。 

 一区切りしたところで、今後のミニ・レッスンに使えそうなことなどを整理しておいてもいいかもしれません。 

 In the Company of Children という ライティング・ワークショップとリーディング・ワークショップ両方について書かれたとてもいい本があります (Stenhouse, 1996、著者のJoanne Hindley は、前回のWW便りで紹介した Shelley Harwayne が校長先生のManhattan New School にも関わっていた人です)。

 著者のJoanne Hindleyは、ミニ・レッスンのミニ・レッスンの(資料)源として以下を挙げています(20-25ページ)

○ 自分の書き手としての経験

○ 本

○ 教える人のために書かれた本

○ 子ども、同僚、専門家

○ 子どもの書いている様子(子どもの作家ノート、カンファランスから分かったことなど)

***** 

 「明日の授業の準備」に追われない時期は、上のようなミニ・レッスンの情報源を「豊かにする」いい時期かもしれません。 

 例えば、 「自分の書き手としての経験」、これは『ライティング・ワークショップ』でも『作家の時間』でも、「教師はモデル」とか教師も子どもと一緒に書こう等々とあちらこちらで言われていることです。

 でも、どうして? これが必要なのでしょうか。 → 今朝、電車の中で読んでいた本の中に、「よく書けている優れた書き手が書いているときに行っていることを教える」という文が出てきて、なんだかとても納得しました(I Read it, But I Don't Get It, Cris Tovani, Stenhouse, 2000, p.5)。 

 書き手としての経験を共有できるように、「作家ノート」(あるいは自分に合った形のもの)を、この夏、活用したいものです。そして、9月からの、ミニ・レッスンの中に、「子どもたちよりも、ちょっと先輩の書き手」として、自分の経験も織り交ぜて教えていきたいです。

 「本」 ーー これはもちろん読むことと書くことのつながりは切り離せないので、いろいろ読んでおきたいです。 

 「書き出しを教えるのにいいかも」、「会話を教えるのにいいかも」、「自分と違った立場で書くのにいいかも」など、読み終わったあとでも、「書き手の目」で見直して、付箋を貼っておくのもいいかもしれません。

 でも、こういうことを記録するのはすぐに忘れてしまうものです。

 私は記録が下手なので、一つの方法として、自分の入っている学びのグループのメーリング・リストに発信します。

 そうすると、そこに記録が残るので後で探せますし、他の人も同じようなことをしてくれると、紹介できる本も増えます。

 WW関係で、教える人のために書かれた良書は、残念ながら英語で書かれたものが圧倒的に多いです。また、このWW便りでも少しずつ紹介していきたいと思います。 

 また、夏休み、子どもの作品もゆっくり見直して、そこからミニ・レッスンのアイディアを書きとめておくのもいいかもしれません。

 カンファランスのメモがうまく取れなかった人は、「書き手としての子ども」についてのメモを、一緒につくってもいいかもしれません。

 もっとも、作品だけだと、その子どもがどういうプロセスで、どういう方法で書いているのかが分からないので、横に「書いているプロセス」という欄をつくっておいて、その欄を授業が始まってから、しっかりメモしていくことも必要かもしれません。

2010年7月16日金曜日

子どもたちの目から見た、先生が大切にしていること

 学期の終わりに近づくと、アンケートや授業の評価をされる方も 多いと思います。

 授業の評価方法はいろいろとあると思います。 

 例えば、学期の初めと学期の終わりに同じ項目を尋ねて、変化を 見る場合もあると思います。 また、子どもたちに作品の自己評価や振り返りをしてもらうこと もあると思います。 そういえば、『作家の時間』(プロジェ クト・ワークショップ編、新評論、2008年)の資料編に は、「資料9 自分の作品をふりかえる」、「資料10 学期ごと に振り返る」  (206~207ページ)などもありました。 

 そんな「評価」のことを考えながら、Shelley Harwayne の  Going Public:  Priorities & Practice at the Manhattan New School (Heinemann, 1999) を見て いたら、あるページが目 にとまりました。 

 それは、293ページのAppendix 5 の 「先生が何を どの程度大切にしているのかを、生徒の目からみて評価する」とい う感じの、評価シートです。 

 「以下のような項目は、先生にとってどの程度、重要だと思いま すか?」 という 質問があり、「かなり重要の場合は1」、 「まあ重要の場合は2」、「それほど重要 でない場合は3」 を記入するようになっています。 

 その項目を見ていると、「好きな作家を見つけること」もあれば 「テストの成績」もあれば「美しい教室」 といった環境に関 わるものもあります。 

 WWに関して、こういうものをつくって、子どもの目から見て、 教師が大切だと思 っていることが伝わっているのかどうか尋 ねてみる、こういう評価も(別に学期末にこだわる必 要はな いと思いますが)ありなんだなと思いました。 

 なお、「ここに書かれているいろいろな項目から3つを選んで、裏にコメントをしてね」、という文も、この紙には書かれていました。

***  

 上で紹介した Going Public: Priorities & Practice at the Manhattan New School も、とてもいい本です。保護者を巻き込む方 法もいろいろ載っています。 

 保護者の希望者に週に一度、6週間の ライティング・ワークショップをした話なども載っています(171-176ページ)。

 もっとも保護者が6週間で終わってほしくない、ということで、数ヶ月続いたようです。 その効果として保護者との関係の変化、保護者が読み書きを大切に思うようになる、先生が子どもたちに教えていることがどういうことなのかを、自分が体験することを通して理解するようになる(172ページ)などが挙げられていました。

2010年7月9日金曜日

カンファランスのための情報を集める ~ (難しい?)カンファランスの記録

 7月2日のWW便り「ごくごく短時間でできるカンファランス」について、以下のようなコメントをいただきました。

これなら簡単にやれそうですね
あるいは、たまにはこういうのをやって、2日ぐらいで全員のをチェックするというのもいいかもしれません。
とにかく、一つの方法だけに固執するのではなく、いろいろ試してみる中で、自分にとって(というよりも、子どもたちにとって)ベストの方法(それも複数あっていい)を見つけ出していくことのような気がします。

→ このコメントを読んでいて、5分でクラス全員の状況を把握する、という方法があるのを思い出しました。ナンシー・アトウエルは出席の確認をするときに、その返事とともに子どもたちがその日に取り組む予定を伝えるという、5分できる「クラスの学習状況確認」をすると書かれています(『ライティング・ワークショップ』 ラルフ・フレッチャー、ジョアン・ポータルピ著、新評論、2007、125~126ページ)。

 『作家の時間』(プロジェクト・ワークショッップ編、新評論、2008年)の97ページには、「クラスの作家たちの進行表」の写真があります。これを使って、子どもたちは自分で、現時点で何をしているかを先生にもクラスメイトにも伝えることができます。

 「クラスの学習状況確認」も「クラスの作家たちの進行表」も、どちらもが、カンファランスをする前の情報にもなります。

*****

 効果的なカンファランスをするための、かなり大切な情報として、「今までのカンファランスの記録」や「教師が書き手として個々の子どもについて知っていること」があると思います。

 しかし、私自身は、実はずっとカンファランスの記録には苦戦中です。

 WWやRW関係の本を見ていると、カンファランスの記録の様々な方法が載っていて(カンファランスに特化したいい本もけっこう出ていますので、またいつか紹介できればと思います)、「これもよさそう」、「あれもよさそう」と思うのですが、いざ、自分がとなると、なかなかうまく「続かない」のです。

 自分にとってしっくりくる記録の方法を見つけるまでには、ある程度、試行錯誤が必要みたいなのですが、私はまだなかなかうまくいきません。

 そこで、多くの本に共通している記録のポイント(と思える点)から、最低限のことを二つ、自分に言い聞かせたいと思います。

★ 誰に、いつカンファランスをしたかが分かるようにすること。

→ 先生は、平等にカンファランスしているつもりでも、記録してみると、けっこう偏りがあるのが分かることが多いです。

★ 誰に何を教えたかを記録しておくこと。

→ 最近、これは教師のために必要ではないかと、思うようになってきました。つまり、何を教えたかという記録を見ることで、教師が「書き手を育てているようなカンファランス」をしているのか、それとも「今書いている作品だけをよくするようなカンファランス」をしているのかが、分かると思うからです。

 もちろん、今書いている作品をよくするための対話を必要だとは思います。しかし、教えたことが、今、取り組み中の作品にをよくすること「だけ」だと、これで書き手が育つのか? と考えてみる必要がありそうです。

2010年7月7日水曜日

未来の作家たちへのアドバイス

『ギヴァー』の著者ロイス・ローリーへのインタビューの中から、WWに関係のある部分です。
 (今日の『ギヴァー』のブログ=http://thegiverisreborn.blogspot.com/からの転載です。)

「作家になりたい子どもたちへのアドバイスをお願いします。何について書いたらいいのでしょうか?」


 「何よりも、たくさん読むことです。そして、読んだことについて考えることです。そうすることで、物語はどのようにつくられるのかを学ぶことができます。

 具体的には、著者がどんなことをしているのかを考えてください。おもしろい登場人物をどのようにして作り出しているのか? 緊張感をどうやって作り出しているのか?

 また、興奮するような文章を読んだ時には、自分でもそんな文章が書きたくなります。読んだことが、あなたの書くことに影響を与えるのです。

 もちろん、書いてください。そして、どうしたら納得いく形でまとめられるか練習し続けるのです。間違っても、どうしたら出版できるかな、などとは考えないでください。その代わりに、言葉の美しさや、言葉から感じることや流れ、そして自分が言いたいことを言い切る言葉について考え続けてください。

 子どもたちには、おじいちゃんやおばあちゃんに手紙を書くことを提案します。それをいうと子どもたちの多くは、“そんなのいやだ~”と言いますが、冗談で言っているのではありません。友だちに何かを語って聞かせるように書くことが、物語を書く練習には一番いいからです。ですから、友だちかおじいちゃん・おばあちゃんに頻繁に手紙を書く習慣をつけてください。いい物語は、そういう関係のもとに書かれた親密さがあるものです。そういう親密さに慣れていないと、ぎごちなく大げさな書き方になってしまいます。

 何について書いたらいいか? 抱えている問題や恐れ、あるいは楽しいことなどについてはどうでしょう」

  (出典: A Reading Guide to The Giver, by Jeannette Sanderson, Scholastic, p. 16 and p. 54)

2010年7月2日金曜日

ごくごく短時間の(カンファランス

 WWでは、「書き手を育てる」ようなカンファランス(つまり、今、書いている作品だけがよくなるのではなくて、そこで学んだことが今後にも活かせるカンファランス)の大切さが、随所で書かれています。

 私自身は、2つの点で難しいなあと思うことが多いです。

 一つはカンファランスの記録。なかなか自分にぴったり合った記録方法が見出せていません。

 もう一つは時間の問題(クラスの人数が多くて、なかなかカンファランスの時間がうまくとれない)です。

 この2点は、今日のWW便りで少し触れ、また、今後もWW便りで時々、書いていきたいと思っています。

 さて、Regie Routman の Writing Essentials (Hinemann, 2005)という、DVD付のいい本があります。

 その中にごく短時間(1~2分、時には5分ぐらいかかることも)で行う、ほとんど"歩き回りながらのカンファランス"があります (217~218ページ)

 基本的には歩きまわりながら、長所やニーズをみつけたり、努力を認めたり、励ましたり、その場でさっと教えたり、評価したり、アドバイスしたりしつつ、短いメモを取ります。そのメモはとても簡単なものです。1枚の紙に20~30人ぐらいの子どもの名前が書いている表があり(1日分)、そこに、ごくごく短い一言、例えば「「作品の名前、いい情報(が書かれている)、読み直しの必要あり」とか「いい書き出し、会話を使う」とか「「おとぎ話終了、題が必要、素晴らしい言葉の選択」程度が書き込んであります。 そして、1対1のもっとしっかりしたカンファランスが必要な子どもには、*がつけてあります。 たまには、こういう感じのカンファランスを、(例えば人数が多ければ)クラスの半分の子どもを対象にしてみる、というのもいいのかなと思いました。