2011年10月28日金曜日

「WW、RWで教える前と、今とでは、変わった点はどんな点ですか?」

WW、RWで教える前と、今とでは、変わった点はどんな点ですか?」

 私にWWとRWを紹介してくれた人から、この質問をメールでいただきました。

 「RWとWWという教え方に出合って、何か変化がありましたか?」という質問に言い換えてもよいかもしれません。

 今日は、自分の振り返りのために「RW・WW便り」を使っているようで恐縮ですが、以下は私の回答です。

 ★ まず私自身についてです。すべて現在も進行中です。

1) 自分自身が作家ノートを携帯し、定期的に使うようになった。

2) 読み書きをする時間が飛躍的に増えた。

3) 「読書ノート」と 「自分の好きな詩」を集めたノートをつくった。

4) 目標にしたい教室や教育者、そして共に学ぶ仲間ができた。

★ 次は授業について。相変わらず試行錯誤という感じですし、必ずしも順風満帆ではありませんが、それでもいくつか挙げたいと思 います。

4) 「考え聞かせ」を使って教える時間が増えた。

5) 「読み方、書き方」を教えるようになった。

6) 課題や教え方などで、迷ったときは、学習者を信頼して舵を切るようになった。

7) (まだすべてのクラスで実現できていませんが)、クラス全員で同じことをする時間がかなり減り、個人に教える時間が増えた(特に、WWと少人数クラスのRW)。

 ここで終わると、変化した自分が見えてよいのかもしれませんが、振り返りの場合は、だいたい次に向けての課題が見えてくるものですし、私の場合も同様です。

 これを書きながら、私の場合、特に7番、人数の多いクラスで読むことを教えることに大きな課題が残っていることが分かります。

 今日このブログを投稿したあとで、自分なりに課題を整理しなくては、と思います。

 みなさんはいかがでしょうか? 時には上の質問を自分にしてみると、次に取り組むべき課題が見えてくるかもしれません。
 

2011年10月21日金曜日

WWとRWが効果的なわけ

 今回は、理論というか原則的なことを。(しかし、見方を変えると、それは極めて実践的なことでもあります。)
 Jane Hansen(当時、ニューハンプシャー大学教授)が、1980年代の中ごろ、読む教え方は相変わらず効果的でない授業(=今も日本では主流の教え方)が続いていたので、すでにWWの普及で書く授業は極めて効果的になっていて(=子どもたちは、読むことよりも書くことをはるかに好きになっていて)、その成功の要因を分析して選び出したのが、このメルマガ/ブログの初回に紹介した5つの要因でした
 彼女は、それを読む授業にも当てはめるべきだと、『When Writers Read(書き手が読む時)』の中で主張しました。

 ハンセンの本が出版された同じ年の1987年には、中学校の教師のNancie AtwellがWWとRWの金字塔の一冊と言われている『In the Middle(すべての真ん中)』の初版を出版しています。彼女も、WWから実践し始めましたが、それがあまり効果的だったので、自分で読みに応用してRWをすでに実践していたのです。
 ある意味では、研究者と実践者が、異なる立場からWWとRWに迫り、似たような結論に達した、と言えると思います。

 このメルマガ/ブログの初回のコメント欄には、6つ目の要因として、「評価と指導」「自己評価と学び」の一体化が達成されている、を加えた方がいいと提案しましたが、アットウェルはそれを最初の時点から意識し、そして実現していたように思います。教え方と評価の仕方は連動していますから、切り離す方がおかしなわけです。

 ここ1年半、私自身、これらの要因について考え続けてきました。今日は、7番目の要因として、「教師がモデルを示す」を加えたいと思います。

 <メルマガの続き>

 教師(や他の大人たち)がいいモデルを示す、という極めて効果的な教え方は、学校や家庭を含めて、社会全般からも減少傾向にあると言っていいぐらいです。子どもたちは、さぞ困っていると思います。こと勉強に関しては、教えられることばかりで、ぜひ真似したいと思えるようないいモデルが提示されないのですから。

 多くの教師は、モデルを示す代わりに、がんばって教える方に時間とエネルギーを注ぎこんでいます。「教えなければいけない」や「教えたい」という気持ちが強すぎて(一種の職業病?)、その結果子どもたちが主体的に学ぶ時間を奪い去っています。それは、授業の中で誰がどれだけ話しているかを測れば簡単に明らかになることです。

 そういう反省がWWとRWでは導入時からありましたから、教師が熱心に教えすぎることを防ぐために、前回も扱ったミニ・レッスンという枠組みで、教師が教える時間を最低限に縮小しています。それによって、子どもたちが主体的に書いたり、読んだり、話し合う時間を最大限確保しています。

 WWやRWの場合は、教師が実際に書いたり、読んだりしているところをモデルで示せます。書くことは、①テーマ選び⇔②下書き⇔③修正⇔④校正→⑤出版のプロセスを順追って、しかも一つの作品が仕上がるまでをじっくり紹介したいものです。(図1を参照。)



 図1では、サイクルで示していますから、何度も繰り返し、しかも異なるジャンル(学級通信や通知表の所見欄など常日頃書くものも活用しながら)で紹介できます。図では矢印は一方向のみにしか描かれていませんが、実際は逆戻りすることも見せたいです。また、それぞれのステップも一回限りでなく、数回繰り返し行われることも。ぜひ、いいモデルというよりも、普段しているモデルを見せてあげてください。

 同じことは、他の教科にも応用できるのではないでしょうか? モデルを示すことは、教科書をカバーすることよりも、はるかに大事なことのような気がします。 教師が、作家や読書家としてだけでなく、科学者、歴史家、市民、数学者等になる体験をとして学び続け、かつ生活していることを。 そしてもちろん、いやいやしているのではなく、楽しくイキイキしているところを。

2011年10月14日金曜日

ミニ・レッスンとは?

 前回、ミニ・レッスンをどのように計画するのかについて書きました。そんなこともあり、一度、自分の中で(主に)RWとWWに おけるミニ・レッスンとは何だろう?と整理してみたくなりました。

 RWやWWを実施している多くの人の共通理解としては、「授業の最初に短時間(5- 15分)で行うことが多く、クラス全員にポイントを絞って教える時間」ではないかと思います。
 (★教える対象者が「クラス全員」である点は、カンファランスとの大きな違いだと思います。)

 ただ、中学校レベルの優れた実践者のアトウエル氏の本を見ていると、彼女の中でもミニ・レッスンが進化しているのも感じます。
 少なくとも、「5~10分で、
先生がしっかりポイントを一方的に提示する」ようなレッスンだけに限定していないように思います。一方的ではなくて、教師と生徒がミニ・レッスンで一緒に考えることもできる部分もあると、アトウエル氏の本を教えてくれているようにも思います。
 そんなことも思い出しつつ、「私にとってミニ・レッスンとは?」と考えてみました。

 とりあえずのイメージは、「河口に向かうボートにクラス全員が乗っている」です。
 
① このボートにクラス全員が乗っていることにより、例えば「オール」、「船尾」 など、クラス全員でボートや川下りについて、
共有できる言葉がある。

 ちょうどミニ・レッスンで、ある作家について学んだ後では、「ロイス・ロー リー」といえば、クラスのみんなが知っているのと同様です。みんなが
共有している 土台であり、共有している知識でもあり、何かを語るときに基本となる枠組みでもあ るように思います。

② 先生には河口までどうやって進むのかについてのイメージや地図はあるが、川の荒れ具合や天候によって、調整が必要。また、次に教えることについては、それぞれ が現在、どんなふうに漕いでいるのかが基本となる。

 (★ ただし教えている時間よりも、もちろん、漕いでいる時間のほうが長い)

 教えている内容は、実際にボートを操るのに役立つこと。
うそっぽいことや、実際に行わないことは教えません。また、子どもがどのようにボートを操っているのか、 これがスタートポイントにもなります。

 ★ 先生自身も、自分の漕ぐスキルを常に向上させている。 

 ★ 川の曲がり具合や天候により、教える時間の長さが変わることもある。また、一緒に新しい漕ぎ方を試してみて、分かることもある。
③ 河口は学年末(あるいは卒業時)。ここからはそれぞれが新しいポートで、新しい川や海出て行く。

 より大きな、新たな世界に出て行くという違いはあっても、どちらも本当に川で ボートに乗っているという点では同じ。

*****
 
 ちなみに 『リーディング・ワークショップ』には、次のようは文章が登場します。

 「ミニ・レッスンは、子どもたちを集めて問題解決に向けて取り組む最良の場を提供してくれます。ミニ・レッスンは、私たちが教えていこうとするカリキュラムを動かしていく力となるのです。ミニ・レッスンがあるからこそ何か素晴らしいことがはじめるという期待感をもって、一貫性のある、しっかりと構成されたリーディング・ ワークショップをつくっていくことができるのです」(82ページ)

 「ミニ・レッスンは、子どもたちの日々の学びや生活と関係のないところに存在しているわけではありません。ミニ・レッスンで取り扱われる内容は、教室で行われている読むことにまつわる様々は活動と密接に関わっています」(83ページ)
 
 また、 『リーディング・ワークショップ』の著者のカルキンズ氏は、書くことの教え方についての本(
The Art of Teaching Reading)では、「ミニ・レッスンは一見 すると短時間の講義のように見えるが、そうではない」と言っています。

 この本を見ていると、短時間の講義とミニ・レッスンの違いは、ミニ・レッスンの場合は「子どもありき」、つまり、実際に書いている(あるいは読んでいる)子ども たちがいて、その子どもたちの助けとなることは何かと考える、ここにミニ・レッス ンが存在する、そんな風に感じます。

出典:
アトウエル氏のミニ・レッスンの考え方は、 Nancie Atwell著 
In the Middle (Second Edition), Boynton, 1998 の 150-151ページを参照しました。

『リーディング・ワークショップ』 ルーシー・カルキンズ著 新評論、2010年

Lucy McCormick Calkins著 The Art of Teaching Writing (New Edition), Heinemann, 1994では、193-217ページの12章にミニ・レッスンについて詳しく書かれています。

2011年10月7日金曜日

ミニ・レッスンを(系統だてて)計画する

 先週のRWWW便りにコメントをいただきました。ありがとうございます。その中に以下のような段落がありました。

「2年目の実践ですが、「とにかく書く」ということがどれだけ重要かを実感しています。楽しそうに書く子どもが増えました!その一方でミニレッスンが行き詰まって います。系統立ててミニレッスンを行うことが自分はとても苦手なんだなぁとつくづ く感じます。今はミニレッスンでとにかく読み聞かせをして、いろんな作家の作品に触れることを大事にしているのですが…」

→ 「今はミニレッスンでとにかく読み聞かせをして、いろんな作家の作品に触れる ことを大事にしているのですが」と書かれていたのですが、素晴らしいミニ・レッスンだと思いました。

 なんといっても「読み書き」のつながりのあることがいいですね!

 『ライティング・ワークショップ』(新評論、2007年)の7章に詳しく書かれていますが、いい作品に触れることは、書くことの大きな力になりますし、いろいろな作家の作品に触れることで、読むことは楽しい!と思えるとさらに素晴らしいと思います。

 そのあとは、例えば、すでに読み聞かせをした作品を、「作家の目で読む」という ことをしてみてもいいかもしれませんし、いろいろな発展系がありそうです。

 『ライティング・ワークショップ』101ページからの「ライティング・ワークショップのミニ・レッスンで本を使う」の、101-105ページでは、本から「作家の技」を学ぶだけでなくて、ジャンルや選択の幅が学べることもよく分かります。

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 いろいろな作家から学ぶことは、山のようにあります。ですから、実はミニ・レッ スンを計画する難しさは、そこから何を教えるのかを「厳選すること」と「その順番をどうするか」ではな いかと思うことがあります。

 私は、自分がWWを始めた頃は、以下のような感じで、順番もあまり考えずに単発のミニ・レッスンをたく さんしていました。

 ある日に、複数の本から「書き出し」を教える。
 次の日には、複数の本から「あるトピックを違ったジャンルで書けること」を教える。
 つまらない題を書いている学習者が多いことに気づいたので、その翌日は「いい題 とは?」を教える。

 教えたいことが多すぎて、あっちにいったり、こっちにいったりしていました。そうなると、系統だったミニ・レッスンは、なかなかできません。

 今もいろいろと試行錯誤中です。 ただ、ここしばらく、一つのテーマで継続して いくつかのミニ・レッスンをすることもでてきました。

 ミニ・レッスンが多少なりとも系統だって(というか、一つのテーマで連続して) できることが増えて
きたのには、2つのことが、助けになっているような気がします。

 一つには、年間を通して達成してほしいことが、いくつか見えてきたので、それを 中心に、それを達成するための一連のミニ・レッスンを考え始めた、という部分があります。

 例えば「作家ノート」。これは使えるようになってほしいし、いろいろな使い方があります。常にノートを携帯して、書きたいと思える題材をさがし、作家のように考え、メモを取り、アイディアを書きとめられるようになってほしいです。そのうち に、自分にとって役立つ作家ノートの使いかたもつくりあげていってほしいです。

 そうすると作家ノートの使いかただけでも、いくつかのミニ・レッスンが浮びますし、1回では教えられません。

 「読者を意識して読み直せ、修正ができる」 。これも、身につけてほしいことの 一つです。もちろん、これも一度のミニ・レッスンでは教えられません。

 そしてしっかり修正したあとは、読者に優しい仕上げのためにも、校正もきでるようになってほしいです。

 こういう大きめの達成目標がいくつか見つかると、どれも一回のミニ・レッスンでは達成できないので、それを元に一連のミニ・レッス ンを考えることもできます。

 もちろん、年間を通して、一度しか教えないのでなくて、同じことを、しばらく後に、また違う角度で、あるいはより深く教えることもあります。

 二つ目ですが、年間を通して達成したいことを考えるときに、書き手としての自分の経験がけっこう大きいです。

 作家ノートにしても、自分が実際にどのように使っていて、自分の場合はどのよう に助けになっているのか、これが一つ入るだけでも、ミニ・レッスンが1回増えます。

 修正しかり、校正しかりです。

 もちろん、先生という「ひとりの書き手」の方法を、生徒に押し付ける必要はあり ませんが、折にふれて、先輩の書き手として、どのようにしているのかを、一つの選 択肢として、ミニ・レッスンで伝えていくことも大切な気がします。

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 ミニ・レッスンの計画については、『ライティング・ワークショップ』 (143-144ページ) 「ミニ・レッス ンで何を教えてよいのか分からない」と11章の年間計画(日本に合うように、原著者の了解を得て、日本の小学校向けに日本の小学校の先生に書いています) なども、ぜひご参照ください。