2011年12月23日金曜日

続 「ひとりではできないことが、できるようになる」

世の中、「こういうことだらけ」ではないでしょうか?
 つまり、「ひとりではできないことが、二人、三人、チームでできるようになる」ことばかりです。(もちろん、中には逆に「複数ではできないことが、ひとりでできること」もありますが。)

 このメルマガ/プログは、まさにそれをサポートする媒体としてスタートしました。
 しかし、メルマガ/ブログという媒体の宿命なのか、まだ一方通行の情報の流れしかありません。
 先週、提案されたようなことをプログ上で展開することは不可能でしょうか?  コメント欄があるので。ぜひ、フィードバックをお願いします。

 さらには、メルマガ/ブログを読んでの感想やフィードバックを発信していただければ、一方通行から脱して、私たちがこのブログ/メルマガを始めた最初の主旨でもある「ひとりではできないことが、できるようになる」の両方通行の情報のやりとり(=最大の学び)に近づけます。
 先日、ある本を読んでいたら、「私たちの学びは、双方通行の情報交換やフィードバックによって可能になる」という主旨のことが書いてありました。何かを書くことも、本などを読むことも、そして学ぶことも、個人的な営みと捉えられますが、どうも誰かとのやりとりのもとに行われている割合のほうがはるかに高いようです。

 年末・年始の休みの間に、過去1年間を振り返り、新たな1年に想いを馳せるためにも、以下のアンケートにお答えいただくのはきわめて効果的だと思います。よろしくお願いします。

 コメント欄に書きにくい方は、pro.workshop@gmail.com に私信の形でメールを流してください。

アンケート

1) 今後もこの「WW/RW便り」を読み続けたいですか?
2) これまでの「WW/RW便り」で印象的な内容は?
3) これまでブログにコメントやフィードバックを送ったことはありますか?
4) あなたがいま一番ワクワク(興奮)している/情熱を傾けていることは?
5) 教師として一番ワクワク(興奮)している/情熱を傾けていることは?
6) あなたが書くことを教える時に一番大切にしていることは?
7) あなたが読むことを教える時に一番大切にしていることは?
8) あなたがWW/RWを実践する中でもっともうまくいっていることは?
9) WW/RWを実践する中での課題や疑問・質問は?
10)来年(度)、WW/RWで新たに挑戦したいことは?
11)WW/RWのテーマで扱ってほしいこと/「WW/RW便り」への期待・要望は?
12)あなたが「WW/RW便り」に貢献できることは?

★ アンケートの結果は、何らかの形でまとめて新年にメルマガ/ブログで流したいと思っています。(ある程度の量が集まらないと、それもできませんので、ぜひお願いします。)

2011年12月16日金曜日

「ひとりではできないことが、できるようになる」

 英語という科目についてのRWとWWを一緒に学んでいる仲間の一人と一緒に、「作家ノート」についてのワークショップを先日行いました。

 今日のRW・WW便りの題に書いた「ひとりではできないことが、できるようになる」は、この時の経験から思ったことです。

 それは、ひとりでは、絶対につくれないワークショップが、二人で作り出せたからです。

 もちろん、作り出すところに至るまでの過程でも、学ぶことが多かったです。

 例えば、「作家ノートを、学習者が使い続けるためにできそうなこと」を、一緒に考える中で、「作家ノート」は集めるべきなのか? その場合は何のために集めるのか? 集めるタイミングは? など、私が以前にはあまり考えていなかったことを考え、私の教え方を修正することもできました。

 この経験を振り返ったときに、私は少なくとも二つの面で、得るものがありました。

1) 一つ目は「二人以上で一緒に同じものをつくる」ことで、「ひとりでは作り出 せなかったものが、作り出せる」です。

2) 二つ目は、「その過程で相手の人から情報をもらうことで、自分の教え方が変わったり、豊かになったりする」です。

 2点目の「人から情報をもらうことで、自分の教え方が変わったり、豊かになったりする」は、まさにRWとWWの教え方・学び方だと思います。

 メーリングリストその他で、共に学ぶ仲間が増えることで、新しいメンターテキス ト、ブッククラブにお薦めのいい本、いいミニ・レッスンなどの情報を得て、教え方もどんどん豊かになり、そこから取捨選択をしてよりよいものをつくっていこうとします。

 これは、このブログを読んでくださっている方たちには、共通していることではないでしょうか。

 そして、共に学ぶ仲間から得たことを、教室の学びに活かしていると思います。

 ところが、 1点目の「二人以上で一緒に同じものをつくることで、ひとりでは絶対に作り出せなかった素晴らしいものが、作り出せる」という点を考えると、私はこの点から、教室の学びに活かしていることはとても少ないのです。

 例えば「二人で一つの作品を完成させる」などは、ほとんど教えたことがありません。

 「ひとりではできないことが、できるようになる」というのは、とても実りが多いのにもかかわらず、です。

 教えることに踏み切れない理由は簡単です。

 私の教えている学習者に対して、どういうミニ・レッスンをして、どんなふうに組み立てれば成功の確率が高いのかが分からないです。

 私自身は過去に何度か、二人(以上)で一つのものをつくるという経験がありますが、その成功は、まだ「相手次第」みたいな点が大きいのです。

 「作家ノート」についてのワークショップがうまく行ったのは、相手の方のおかげです。でも、これでは教室で「うまくいきそうな人をさがしてね」以外に教えられることがありません。

 ということで、今日のブログは、「二人以上で、一人では絶対につくれないような素晴らしい一つのものをつくる」ことを教えたいので、ご自身の経験からでも、また、教室の例からでも、
いいミニ・レッスンや例などを、情報提供してくださると嬉しいです、というお願いで終わりたいと思います。

 よろしくお願いします。

2011年12月9日金曜日

「順調に進んでいないのですが……」 → 「順調に進めるために」 ~二つのヒント~

 前回のRWWW便りは「順調に進んでいないのですが……」でした。

 今回はそのつながりで、「順調に進めるために」のヒントを、「うまく行っている場合」「うまく行っていない場合」から、書きたいと思います。

★ まず「うまく行っている場合」のヒントです。

 中学校レベルでの優れた実践者であるナンシー・アトウエル氏の本の中で、とても印象に残っている箇所があります。

 アトウエル氏のWWのクラスに、WWの第一人者の一人のグレイヴス氏がやってきます。

 その日の授業のあと、グレイヴス氏はニコニコして、アトウエル氏に、「君は、WWのいい先生とは、どういう先生なのか、よく分かっているね」と言って、ほめてくれるのです。

 アトウエル氏は、その瞬間、何をほめられるのか、と頭の中にいろいろな可能性が 浮かび、期待でいっぱい、まさにドキドキの瞬間だったと思います。

 グレイヴス氏の返事は予想外だったようです。

 その返事とは、"You're so damned organized." でした。
 
 日本語にうまく訳せない台詞ですが、「思いっきりしっかりと、計画的できちんと整理されている」みたいな感じでしょうか。

 きょとんとしたアトウエル氏に、 グレイヴス氏は、「だって、計画的できちんと 整理されていないと、この方法(つまりWW)で書くことは教えられないからね」と続けます。

 *****

 この箇所がとても印象的になのは、実際にWWやRWをしていると、「そうだ」と思うことが多いからです。

 学習者が主体的な書き手、読み手になるためには、きちんと用意しなければいけないものもけっこうありますし、学習者が自分で動けるような準備も、そのためのサポートも必要です。

 特に人数が多い場合、例えば、書き終わったものはどうする、質問のあるときはどうする等々を、学習者が分かっていないと、先生は学習者に追われてしまいます。そうなると、カンファランスの時間もとれなくなってしまいます。

 うまくいっているときには、「カンファランスが上手だから?」とか「私自身が書き手であり、読み手であるから、書き手と読み手の気持ちがよく分かって指導できているから」等々と、考えたいものです。

 でも、学習者が自分で動けるようにきちんと整理・準備されていて初めて、カンファランスの時間は確保されるのです。カンファランスの記録がきちんと整理されていて初めて、数回のカンファランスにつながりが生まれたりするのです。

 明日の授業での学習者の動きを想像してみて、必要な準備をきちんと整理し行っておく、これは大きい気がします。


 ★ 次に「うまく行っていない場合」のヒントです。

 前回のRWWW便りに書きましたように、全く順調でなかった私が、次のミニ・レッスンを考える上でよりどころにしたことは二つありました。

 一つは書き手としての自分です。学習者よりも、少し先輩の書き手として、自分が書くときにしていること、助けになること、問題点などを、もう一度振り返り、そこ から、書き手として、学習者に現時点で伝えることは何だろうかと考えました。

 もう一つは、学習者の書いたものです。

 今までに出された作品に、もう一度目を通し、課題を整理しました。

 全体への共通した課題というよりは、3段階ぐらいの課題があるように思いました。

 それで、次の授業にできることとして全体で行うことと、選択肢のある課題(3段階ぐらい)を考えました。そして全体で行うことが終了したあとは、その3つの中で、自分があてはまる部分をやってみるように言いました。

 ほんの少し、修正軌道に入れたかなとも思います。

 引き続き考えて行こうと思います。


出典:

上で紹介したアトウエル氏とグレイヴス氏とのやりとりは、Nancie Atwell著、In the Middle, second edition (Boynton/Cook, 1998) 89-90ページです。

2011年12月2日金曜日

「順調に進んでいないのですが……」

 「RW・WWが順調に進んでいますか?」と問われると、現在の私は「いいえ」と答えざるを得ません。

 うまくいっていません。

 『リーディング・ワークショップ』(新評論、2010年)の第7章は、「評価を授業に組み込む」という章です。



 その章の注に「この章で扱っている評価とは、成績や評定をつけるための評価ではなく、教師の教え方と子どもたちの学び方を改善するための評価です」(115ページ)と書かれています。

 まさにそういう、教え方と学び方の改善のための「評価」の必要を、ここ2週間ぐらい、痛切に感じています。

 さて、WWの方を例にとり、私の今学期のWWで、現在、どんな問題が発生しているかというと。。。

○ 作家ノートを集めてみると、宿題で行うように言ったことしか、書いていない学習者がいる。これでは、作家ノートの本来の意味がかなり失われている。(要は最低限しか書いていない、ということです。)

○ (私の担当科目は英語ですが、)この時点になっても、まだ、英語の基本的な書き方が分かっていなくて、翻訳ソフトを使ってその場をしのごうとする学習者がいる(→ ミニ・レッスンを聞いていない? 教えたことが定着していない)。

○ 修正には興味がもてない、あるいは自分で修正できるようになることに意欲のもてない学習者もいる。

○ 校正の個別のチェックリストをつくれるような方向に、もっていけていない。

○ 校正は私が手を出しすぎている。自分で読み直すことがうまく教えれていない。

○ ピア・カンファランスができていない。


 

 少し考えるだけでも、どんどん出てきます。問題が山積みですね。

*****

 ここまで読んでくださった人の中には、「RW,WWって、タイヘンな教え方なのでは?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

 たしかに、RWとWWをはじめた途端にすべてがバラ色になるわけではありません。

 準備の量も、授業をどう組み立て、どう修正しようかと悩む量も、「量的にみると」従来型の教え方と同じぐらい、あるいはそれ以上にあるように思います。

 しかし、「この教え方を続けたいですか?」と尋ねられると、答えは「はい」です。

 それは、授業の準備も、悩む内容も、従来型の教え方と「質」的にまったく違うからです。



 質的な違いは、簡単には説明できないのですが、RWとWWに出合う前は、「今読んでいるものを読める」とか「今書いているものがよくなる」に終始していた気がします。この場合、もちろん、教師が正解を提供するのが一番早い解決法となります。



 RWとWWに出合った後は、明日以降も使えることを教えたいと思いますし、全体に教えることと個人に教えることを分けたいとも思い、その方向で準備をします。



 もちろん、カリキュラムの制限、人数の問題、教室内に物理的にあるものやないもの等々の問題ともあいまって、なかなかうまくはいかないときもあります。それでも、そのろいろな制限や問題のなかで、その手立てを考えようとしています。


 それだけでなくて、授業から受けとるものも違う気がします。RWやWWで教えていると、書き手、読み手としての個性が出てく るので、それは教室の学びを豊かにしてくれています。学習者が読んだ本について、学習者と語るのは、とても楽しいですし、誰かが他の人に、自分が読んだ本について語っているのを聞くこともよくあります(特にうまくいっているときは)。



 また、学習者の方から「次は○○さんが読んでいたような詩集を読みたい」等々、学習者から、何を学びたいかという声を聞くこともあります。これ も従来型の学びでは、あまり聞けなかった声ですし、教えているほうにしても、とても楽しいし、嬉しいことです。

*****

 さて、山積みの問題に目を戻します。

 『リーディング・ワークショップ』の中には以下のような文もでてきます。

 「事実、問題が起こるのです。<中略> 私たちが今までに読んできた多くの物語と同じように、教室を舞台にしてこれからはじまる物語も、問題が生じるところから旅がはじまるということなのです」(80-81ページ)。

 この文、納得です。



 そして、『リーディング・ワークショップ』の中では、問題解決の一つの方法として、ミニ・レッスンを挙げています。「ミニ・レッスンは、子どもたちを集めて問題解決に向けて取り組む最良の場を提供してくれます」(82ページ)とも書かれています。

 この週末は、次回のミニ・レッスンを慎重に考えようと思っています。