2012年3月30日金曜日

読書記録の振り返りから見えてくること

私は今まで子どもたちの読書記録を読んで、子どもたちを読み手として理解しようとはしていましたが、子どもたちに自分の読書記録を振り返らせることをやらせてなかったです。

フランキー・スィベーソンとカレン・スズィムズイアック実践を見習って、今年度教えていた4年生のクラスの子どもたちに、それぞれ自分の読書記録の振り返りをさせました。読書記録の振り返りの目的は読書記録から気づいたことを出して読み手としての自分の理解を深め、その気づいたことを目標設定など次に活かすことです。

読書記録と読書ノートは違います。読書ノートは別にノートを用意させて主に本を読んでいる時に生まれる自分の思考を書く場として使わせています。

読書記録はいろいろなバリエーションがあります。日付と読んだ本のタイトルだけを記録するようにできているデザインの読書記録もあれば、それに加えて読み終えた本の累計、本の評価やジャンルを書く欄、また途中で読むことをやめたか、最後まで読めたかを記号で書く欄があるなど目的に応じて様々なデザインの読書記録があります。







 例えば私の教室で使っていたこの写真の読書記録は日付と読んだ本のタイトル、また学校と家でどれだけのページ数を読んだかを記録できるようになっていました。 しかし子どもたちの好みや目的が一人一人違うので、来年度はいくつか異なったデザインの読書記録を用意して好きなものを選ばせようと思っています。

読書記録の振り返りシートはスィベーソンらの実践をほぼ忠実に再現して以下の質問項目のものを使いました。



 「読書記録から気づくことは何ですか?」という質問については、「よく読むのが怪談レストランシリーズと青い鳥文庫」、「物語が多い」、「スポーツの本を読んでいる」というように、「どのように本を選びますか?どんな方法で読む本を決めますか?」という質問については、「好きなシリーズの本を選んでいる」、「表紙を見て選ぶ」、「題名で決める」というように、子どもたちが読み手としての自分の理解を深められていたり確かにできていたりすることが分かりました。

「読む本を選ぶ方法の中でこれから取り組みたいことは何かあります?」という質問については、「1ページではあまり分からないから2、3ページ読みたい」、「友だちのおすすめを聞く」というように新たな選書の方法にチャレンジしたいという目標が設定できているのが分かりました。

自分がどんな読み手であるかの理解を深めることは読み手として成長を助けます。読書記録の振り返りで自分の理解を深める目的の一つは自分の課題をはっきりさせることです。この振り返りシートで子どもたちは読み手としての自分の理解を深めることができたことによって、今までしてこなかった選書の方法にチャレンジしようなど、主に選書の目標設定を助けることができたと思います。


振り返りシートの質問を振り返ると、これからどんな選書の方法を試したいかだけではなく、他にも読書の課題や目標を考えさせる質問があると振り返りシートがよりよくなるだろうと思いました。ジャンルについての質問があるので、例えば読んできた本がスポーツの本をばかりだから他のジャンルにもチャレンジしたいなど他の課題の明確化や目標設定につながる質問です。

もう一度スィベーソンらの本を再読すると、この読書記録の振り返りシートに加えて、学期末の読書記録の振り返りシートが別にありました。

具体的には学期末の振り返りシートには以下の質問項目があります。

 ・家と学校で読み終えた本のリストを書きましょう。
 ・途中で読むのを止めた本のリストを書きましょう。
 ・新しい好きな作家やシリーズは見つかりましたか。
 ・読んだすべてのジャンルのリストを書きましょう。
 ・次の学期に読みたい本はありますか。
 ・今学期の読書で最も誇りに思うことは何ですか。
・来学期の目標は何ですか。

またスィベーソンらの実践では、子どもたちが次に自分のなりたい読み手のゴールを考えて、そのゴールに合わせて自分の読書記録シートを創るという実践につなげています。自分の読書記録シートを創るという取り組みの中で、子どもたちが読書記録と読書ノートを融合した読書記録シートを創っているところは興味深いです。例えば予想するという読み方ができるようになることを目標とした子は、自分の予想を書き込む欄を読書記録のシートに創っています。今年度はここまでやれませんでしたが、来年度はチャレンジしたい実践の一つです。


出典
Franki Sibberson Karen Szymusiak, Day-to-Day Assessment in the Reading Workshop: Making Informed Instructional Decisions in Grades 3-6, Scholastic Prof Book Div 2008, traditional reading log p68 

2012年3月23日金曜日

詩集の選書を助ける(詩のカード)

3人目の執筆者として加わります「てる」です。今年度は小学校の4年生の担任をしていました。リーディングワークショップについて書かれたたくさんの原書から学んだことを少しずつ自分の実践に取り入れています。本を読んで分かったことや実践してみてよかったこと、うまくいかなかったことなど振り返りを発信していきたいです。アドバイスなどフィードバックをいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

フランキー・スィベーソンとカレン・スズィムズイアック(Franki Sibberson & Karen Szymusiak)の本に詩集の選書を助けるいいアイディアを見つけました。詩集の選書を助けるために詩のカードを用意するという方法です。子どもたちが気に入りそうな一つの詩をとっかかりにして、その詩集自体を読んでみたくなるということを期待する実践です。

6〜8冊の詩集から(もっとあってもいいと思います)1冊につき、詩を一つずつ選び表紙と作品のコピーを用意します。カラーのタグボードの表に詩、裏に詩集の表紙を貼ります。カードの裏にある表紙の近くには「この詩が好きなら、この本のほかの詩も好きかもしれない」と書いてあるようです。

さっそくカードを作ってみました。表が詩で裏が表紙です。スィベーソンらの実践ではカラーのタグボードに詩を貼り付けているようでしたが、B5の紙に詩と詩集の表紙をコピーしラミネート加工して作りました。


 完成したカードは詩集のカゴの先頭に入れます。


まだカードは5枚で、詩集は8冊くらいしかないですが幾人かの子はカードの詩を読み詩集を手にとって読んでくれました。他にもいろいろなジャンルを読もうという課題と絡めて詩にチャレンジしようという意欲をみせてくれる子が少しずつですが増えてきました。

詩集のカゴに詩集がさらに増えて20〜30冊くらい、そして詩集のカードも同じ数くらい揃ってくればさらに効果が期待できそうです。これからさらに詩集と詩のカードを充実させていきたいです。だから最近の週末はよく詩集を本屋で読んでいます。これがとても楽しかったりします。自分も詩を楽しみ書いていきたいです。

出典: Franki Sibberson & Karen Szymusiak, Still Learning To Read, Stenhouse Publishers 2003, Poetry Card p95

投稿者:てるさん

2012年3月16日金曜日

たとえば、どんなテーマ?

協力者、大募集!! に対して、「具体的にどんなテーマ/切り口があるのですか?」という質問をもらいました。

 春休みの少し時間の余裕がある時にスタートして、可能ならぜひ年間を通じてテーマで扱える(絵)本や詩を一緒に探し続けていただけると、うれしいです。

「セルフ・エスティーム」と「アイデンティティー」は、すでに紹介しましたが、これまでに以下のような項目をリストアップしていました。

愛 遊び 命 異文化の受容 意欲(自分から進んでする) 老い おもいやり・共感 かかわりを持つ 書き(ライティング) 家族 価値観と信念 学校 環境 聴く 協力 希望 計画/実行、時間の管理 計算・算数 原因と影響 好奇心 コミットメント コミュニケーション 死 幸せとは 時間 思考力(創造的思考力) 自己管理 仕事・職(失業/就職する) 自己の確立 自然 持続(へこたれない) 社会の変化 柔軟性 情報加工 信頼 性 正義と公平 誠実さ 責任(感)先生 相互依存 大切なもの(こと) 大切なものを選び出す力(クリティカル・シンキング) 対立 多様性/個性を認める 地域 友だち 努力 似ている点・異なる点 人間としての尊厳 忍耐(がまん) 能力 判断力 評価 プロセス ベストを尽くす 変化 本当のことを言う 本物とは 見下さない 問題解決 ユーモア 勇気 読み(リーディング) リーダーシップ 歴史

 この中には、2月17日の「教職につく人に読んでほしい(絵)本」と「一歩一歩頑張ろうと思える(絵)本」は含まれていません。
 ですから、上のリストは完成されたリストではありません。
 自分のこだわりの項目をぜひ付け足してください。

 いま考えると、理科や他の教科で使えるような、たとえば石、川、星・月・太陽、木、花、草、動物(魚、哺乳類、虫など)を加えてもいいと思います。

 なお、社会科の主なテーマは、ほとんどすべて含まれているはずです。すでに20年以上前になりますが、中高の社会科の先生たちと検討した『ワールド・スタディーズ』の基本コンセプト=社会科の基本コンセプトをすべて含めましたから。(ちなみに、日本の社会科はコンセプトで学ぶようにはなっていません。あくまでも「知識」です。大切なことは知識を覚えることではなく、コンセプトを身につけることなのに・・・)そうなると、理科(や他の教科)も同じことが言えますね。いったい、理科で大切にすべきコンセプトは何でしょうか? 星や花や魚や虫等の名前を覚えることが大切なわけではありませんから。たとえば、システム、バランス、パターン、分類、機能、進化、変化と不変、力/エネルギー、形(構造)、秩序と混乱といった感じでしょうか? 以前読んだ本には、これらとはちょっと違うのが書いてありました。数学のコンセプトと一緒に覗いてみてください。

2012年3月9日金曜日

剪定をする

年度末まで3週間ぐらいになりました。たいへんご多忙の時期だと思いますが、新年度に向けて、少しずつでもRWとWWの「剪定」を始めてみてはいかがでしょうか? 

具体的には、「残す枝を決めたり、不用な枝を切ったり、形のよくない枝を刈り込んだりして形を整える」というイメージで、今年度使ったワークシートや授業のメモが手元にある間に、それらを、隙間時間などに少しずつ見ていきます。 

例えば、ワークシートであれば1枚ずつ見ていって「これは来年度も使おう」、「これはよくなかったので来年度は使わない」、「このワークシートは少し改善して来年度も使おう」という感じです。

もしミニ・レッスンの記録メモなどが手元にあれば、同じように(来年度・今後)「使う、使わない、改善して使う」に分けていきます。その中で気付いたことなどは、ぜひ、このブログなどで教えてください。

*****

私自身は、ちょこっと剪定を始めてみて、ワークシートが、どんどんシンプルなものになってきていることに気付きました。教えている中で、余分なものが落ちてきているというか、逆に言うと、余分なものを落としていかないと続かない教え方なのかもしれません。 

また、シンプルになってきているとはいえ、例えば、いろいろなジャンルに触れることの大切さを学んだあとは、「読書記録にジャンルという欄をいれておいてもいいかな?」と考えたりもするので、自分が学んできたことが反映されているのも分かります。 

剪定作業を始めると、新学期の準備が始められるだけでなくて、自分の学びの振り返りもできるようです

2012年3月2日金曜日

ひとりでできる?ブッククラブ ~作家や背景について知ることを通して本 をさら に味わう~

 今日のRWWW便りは、ここ2回で取り上げられた「テーマ別の引き出し」を考え
ていたときに、その関連で作家ノートにメモしたことから書いています。

 「テーマ別の引き出し」について書いたときに、「死別」というテーマについても
少し本を紹介しました。

 このテーマでよく取り上げられる絵本の1冊、『悲しい本』★は、最初、読んだと
きには、「著者の子どものエディ君との死別があって書かれた絵本」ぐらいのことし
か、知りませんでした。

 ただ、実話がもとになっているということで、とても気にもなっていました。それ
で、『悲しい本』に出合ったあと、この著者の本を何冊か読むようになりました。

 そして、同じ著者の書いた他の本の中の1冊で★★、著者が、エディ君の死と『悲
しい本』を書いたいきさつについて語っているページに遭遇しました。思わず、引き
込まれてそのページを読んでしまいました。

 そのページを読んだおかげで、『悲しい本』を、今までとは違う角度で味わうこと
ができました。

 それ以来、クラスで誰かが『悲しい本』を読んでいると、著者がエディ君の死と
『悲しい本』を書いたいきさつについて語っているページに付箋をつけて、「ここも
読んでごらん」と渡すことが多いです。

*****

 ブッククラブでは、読んだ本について話し合うことで、理解が深まったり、今まで
気づかなかった面に気づくことが多いです。他の人と、ある本について対話すること
は、私にはとても楽しいですし、多くの発見があります。

 ある作家や、ある作家のある作品の背景について知ることは、私には「ひとりでで
きるブッククラブ」みたいなものです。

 それは、『悲しい本』についても、その他の本についても、背景や作家を知ること
で、その本を、以前とは違う角度で、違う味わいを楽しめることが多いからです。

 著者が自分の作品について書いた本を読めば、著者と対話しながらのブッククラブ
をしているように思えます。

 そして、著者について書かれた本を読めば、その著者をよく知っている人と対話し
ながらのブッククラブをしているように思えます。

*****

 今年度も残すところあと少しです。今年度、気になった本や作家についての本を読
んでみる(あるいは調べてみる)、こんな読み方を子どもたちに紹介して、春休みに
「ひとりブッククラブ」を楽しむのも、いいかもしれません。また春休みのリーディン
グ・プロジェクトとしても面白いかもしれません。


出典:


★ 2月17日のRWWWでも紹介しましたが、『悲しい本』 は、マイケル・ローゼ
ン 作  クェンティン・ブレイク 絵  谷川俊太郎 訳 あかね書房 2004年です。

★★ 『悲しい本』 の著者、マイケル・ローゼンは多くの本を書いていますが、そ
の中の以下の本の42~43ページで、『悲しい本』を書いたときのことを、かなり
詳しく述べています。

Michael Rosen,
All About Me, Collins, 2009. イラストはTim Archbold