2017年10月27日金曜日

自分の中で対話ができる読み手・書き手(+考え手・学び手)を育てる


こでは、メタ認知を、「自分が読んでいるテキストに関して、読み手として自分の中で行っている対話」と定義しており、間違いなく私がこれまで見た中で一番分かりやすいと同時に、『「読む力」はこうしてつける』の中で扱っている内容と親和性が高いです。

 今回は、自分の中で対話ができる読み手・書き手(+考え手・学び手)を育てるための4つの追加の情報源を紹介します。

    上記の記事の中でも紹介している『「考える力」はこうしてつける』(ジェニ・ウィルソン他著、新評論)は、まさに、振り返りとメタ認知能力をベースにつくられた本です。
上記の記事の中には、とても分かりやすい図(図1-2)をその本から転載しましたが、ここにもう一つ「振り返りとメタ認知能力との関係」を分かりやすく示してくれている表を掲載します(21ページの表1-2)。

これら2つの図と表をベースにしたたくさんの具体的な事例が、『「考える力」はこうしてつける』には紹介されていますので、ぜひご一読ください。ちなみに、原書のタイトルはThinking for Themselves(子どもたち自身に考えさせる)です。これほど、日本の授業でおろそかにされているものはないかもしれません!
なお、この本はリーディング・ワークショップ(読書家の時間)とライティング・ワークショップ(作家の時間)をほぼ毎日実践している教師の教室での実践がベースになっています。その時間割まで掲載されています(66~67ページ参照)!

    『「読む力」はこうしてつける』の66~68ページで、責任の移行モデルについては紹介していますが、それだけでは実践できるようにはなりにくいので、このテーマだけで一冊にした本を翻訳出版することにしました。『「学びの責任」は誰にあるのか ~ 「責任の移行モデル」で授業が変わる』です。来月の今頃には出ているはずなので、ぜひチェックしてください。この中でも、メタ認知能力の重要性を強調しています(主には、第5章を参照)。
こちらでは、メタ認知を「学習者自身の学びのプロセス、自分が一番学びやすい条件、実際に学びが起こったということを意識的に認識すること」と定義づけて(これらも、とても重要!!)、それを責任の移行モデルの4段階で認識する機会を提供しようとしています。中でも、協働学習や個別学習の際に、次のような4つの質問を意識させることで、「メタ認知的なつぶやき」を育てることができる、としています。

1. 自分は何を達成したいのか?
2. 自分はどんな方法を使えばいいのか?
3. 自分は方法をうまく使いこなせているか?
4. ほかにやれることは何だろうか?
 
  これらは、教師も、管理職も、教育行政に関わる人も発しないとまずいのですが・・・(子どもたちの周りの大人が実践していないと、子どもたちはやれるようになれませんから。)

    「優れた読み手が使っている方法」の一つである質問する力に焦点を絞った『たった一つを変えるだけ ~ クラスも教師も自立する「質問づくり」』(ダン・ロススタイン&ルース・サンタナ著、新評論、2015年)も、メタ認知能力の重要性には言及しています。
  この本では、「自分が学んでいることや考えているプロセスについて振り返って考える能力」とし、「すべての生徒にとってより良く学べるためには欠かせないものとして捉えられるようになっています」(36~37ページ)。そして、「できる生徒たちは読んでいる内容に対して自然に質問を投げかけたり、次に何が起こるかを予測したり、自分の理解や解釈を振り返ったりする」(37ページ)と指摘しています。まさに『「読む力」はこうしてつける』のパート2で紹介している内容そのものです。
  そして、『たった一つを変えるだけ』では、発散思考と収束思考とメタ認知思考は、「今はもっていないかもしれませんが、生徒たちの誰もが身につけることのできるとても重要な思考力です。(この本で)極めて簡単の手順でこれら3つの思考力を身につけ、そして自分のものにする『質問づくり』の方法」(39ページ)が紹介されています。



ぜひ、これらの本も参考にしながら、振り返りとメタ認知をベースにした授業や学校生活を送ってください。必ず実践は向上します。逆に言えば、振り返りとメタ認知なしでは、なかなか向上が図れないことを意味します。(同じことの繰り返しでは、悲しいです! 子どもたちのためにも、何とか避けたいです。)


2017年10月20日金曜日

推理するってどういうこと?


    ちょうど先月のこのブログで、スティグ・ラーソンの『ミレニアム』を読み始めたと書きました。その面白さに引き込まれ、ラーソンの死後ダヴィド・ラーゲルクランツによって書かれた続編も含めて、シリーズ邦訳はこの一月で全部読み終えてしまいました。ちょっとした『ミレニアム』ロス状態です。どうしよう・・・

というところで手にしたのが、マリア・コニコヴァ『シャーロック・ホームズの思考術』(日暮雅通訳、ハヤカワ文庫)でした。この本は、推理小説の登場人物の思考法に焦点を当てています。とくにコナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズに焦点を当てて(幼い時に、著者が父親に読み聞かせてもらったのだそうです)、ホームズとワトスンの思考法を掘り下げます。作中人物の思考法を探る本かと思って読み始めたのですが、いやいや、『理解するってどういうこと?』と同じように、私たちの「理解の仕方」を深く掘り下げてくれる本でした。

〈ワトスン・システム〉と〈ホームズ・システム〉と名づけられた対照的な思考法が本書では繰り返し話題になります。〈ワトスン・システム〉とは「反応が速く、直観的で反射的であり、意識的な思考や努力を必要としないオートパイロットのような役目のシステム」であり、〈ホームズ・システム〉とは「反応が緩く、検討を重ね、より徹底して、論理にかなった動きをするシステム」のことです(この定義は訳者である日暮氏の「解説」によります)。後者はシャーロック・ホームズ、前者はホームズの相棒となるワトスンの思考システムをあらわしています。

コニコヴァはホームズの判断の特徴をなす要素として、【選択力をもつ】【客観性をもつ】、【包括的にみる】、【積極的に関与する】の四つを指摘しています。これらについて、彼女が言っていることを少しだけ引用しますから、読んでみてください。



【選択力をもつ】

○選択力――〈マインドフル〉で思慮深くて賢い選択――は、どのように注意を払い、限られた資産を最大限に活かすかを学ぶ、重要な第一歩だ。はじめは小さく、無理なく管理可能なもので、範囲の明確なものから始めよう。〈ワトスン・システム〉が〈ホームズ・システム〉のようになるには何年間もかかり、たとえそうなったとしても完全には無理かもしれない。しかし〈マインドフル〉になることに集中すれば、必ず近づける。〈ワトスン・システム〉に〈ホームズ・システム〉のツールを与えて、助けてやろう。そうでもしないと、何もないのだから。(136137ページ)

【客観性をもつ】

○観察するためには、状況を解釈から分離させ、自分が見ているものと自分自身を分離させることを学ぶ必要がある。〈ワトスン・システム〉は主観的で、仮説に基づく、演繹的な世界へ逃げ込みたがる。自分にとってわかりやすい世界だ。一方〈ホームズ・システム〉は、手綱を締めることを知っている。/効果的な訓練のひとつは、状況の始まりから全部、何も知らない他人に対して説明するように、声に出すか紙に書いて描写することだ。それはちょうど、ホームズが自分の推理をワトスンに話して聞かせることに似ている。ホームズがこのやり方で自分の観察を述べると、前にはわからなかった食い違いや矛盾が表面に浮かび上がってくる。(146ページ)

【包括的にみる】

○感覚を意識的に使えば、ある状況の現在が明らかになるだけではなく、その状況の忘れられた一部、すなわち、そこには存在しないもの、本来ならあるべきなのに欠けているものが浮かび上がってくるということだ。そして、不在は存在と同じくらい重要で、有力な手がかりになる。(154ページ)

【積極的に関与する】

○観察力のある心、注意力のある心は、現在に集中する心だ。さまよわない心であり、今やっていることが何であれ、それに積極的に関わる心だ。そういう心なら、素早く駆け回り、何でも見て何でもやろうとする〈ワトスン・システム〉でなく、〈ホームズ・システム〉で仕事を始められる。(178ページ)



この四つの要素は、〈ホームズ・システム〉の特徴というだけでなく、私たちが本を深く理解しようとするときにも大切だと思います。注意してほしいのは、〈ワトソン・システム〉と〈ホームズ・システム〉という二つが、私たちの脳の二つの半球の関係のように、常に補いものとして書かれているという点です。〈ワトソン・システム〉なしの〈ホームズ・システム〉はありえないのです。「反応が速く、直観的で反射的であり、意識的な思考や努力を必要としないオートパイロットのような役目のシステム」(ワトソン・システム)を使うのを控えて、もっと注意力を使って選択したり、何も知らない人にするように説明してみせたり、本来ならあるべきなのに欠けているものに目を向けてみたり、現在に集中して積極的に関与したりすることを意識的にやってみれば、もしかすると、私たちは本や文章や人生について、ホームズのように、他の人にはできない発見をすることができるのかもしれませんね。

冒頭で取り上げた『ミレニアム』の中心人物ミカエル・ブルクヴィストも、この二つの〈システム〉を巧みに駆使しながら、自らの身にふりかかる難題を解決していきます。

2017年10月13日金曜日

書き手を育てるピア・カンファランス


教師によるカンファランスと、子どもたち同士が行うピア・カンファランスは、あまりに効果的なので、これまでも繰り返しこのテーマについては扱ってきました。
http://wwletter.blogspot.jp/ の左上の検索欄に「ピア・カンファランス」を入力して🔍をクリックしてください。)

ピア・カンファランス(およびカンファランス)のいい点は、フィードバックを受け取る側はもちろん、提供する側にも学びがあることです。

http://wwletter.blogspot.jp/2010/05/ww.html のような環境が整っていますから、子どもたちは極めて主体的に学び、書き手(や読み手)に成長していきます。

今回は、フィードバックを提供することに焦点を当てた情報提供です。

受け入れられるフィードバックをするには、それなりのスキルが必要です。(自分が言いたいことだけを言っていては、受け取る側はいい気持ちがしませんし、そのほとんどを受け取ってくれない可能性も大です!)
その意味では、教師が子どもたちに対してカンファランスする際に使うスキルがすべて必要であることを意味します。★そのポイントについては、『リーディング・ワークショップ』(ルーシー・カルキンズ著)の第6章に詳しく書いてありますが、このプログで紹介した

ピア・カンファランスを通して、フィードバックを提供する側が身につけるスキルには(ライティング・ワークショップの場合)、
・読み手として、作品や書き手を意識する。
  ・効果的な書き方にはどんな特徴があるかを意識する。
  ・書くときに使う言葉を使いこなせるようになっていく。
  ・編集者としての目を、自分が書くときに応用できるようになっていく。
   (書くときに自分の中の編集者と、自問自答ができるようになる!)

だからと言って、子どもたちみんながすぐにいいフィードバックが提供できるわけではありません。練習が必要です。(教師ががんばって教え続けるよりも、子どもたちががんばって練習できる機会をできるだけたくさん提供することの方が、授業としてははるかに価値があり★★、これこそがアクティブ・ラーニングと言えるものです!)

それでは、具体的に、どのようにその練習の機会とサポートをしたらいいのでしょうか?

○ チェックリストを提供する ~ リストの数や内容等は、対象年齢等で柔軟に対応する。(特に小学校低中学年は、少なくとも初期のうちは不可欠と捉えた方がいいでしょう。)

○ 「好きなこと、~ならよかったと思うこと、疑問に思うこと」 ~ 作品にフィードバックを提供する際は、以上の項目を一つずつ提供することを念頭に入れて読むと、「間違い探し」にならなくて済みます。(その意味では、教師こそが使える方法です!!)★★★
ちなみに、この方法は、「大切な友だち」=カンファランスのアプローチにとても近いです。

○ 小学校高学年以上の生徒には、フィードバックをする際に大切にしたい点をリストアップさせてから、やってもらいます ~ リストには、テーマ、構成、文の構造/滑らかさ、言語規則などが含まれます。
 どの段階でピア・カンファランスをするかによって、力点は違ってきます。まだ下書き段階なら、内容やテーマが中心になります。かなり修正を加えた段階なら、構成や文の構造や滑らかさに力点が移ります。清書段階のものは、言語規則ー=校正が中心です。その意味では、フィードバックを提供する側よりも、受ける側のニーズこそを重視する必要があると言えます!

○ 建設的な話し方とは・・・ ~ 「ピア・カンファランスをするときにしていいことと悪いこと」
 まずは、フィードバックをする側が言ったり、したりしてはいけないことからリストアップします。「これ、最悪!」「この書き始めじゃ、続けて読むは気しないよ」など。
 次に、望まれる言い方をリストアップしていきます。「この点についてとても興味を持ちました。もう少し詳しく教えてもらえませんか」「書き始めはとても惹かれますが、他のよりいい方法はないかなとも思いました」など。

○ 具体的に指摘する ~ 読み終わってから、「とてもよかったです」では、何がよかったのか、さらに何をよくできる可能性があるのか、さっぱり分かりません。ピア・カンファランスを通じて、具体的なポイントを指摘できる目を養うことは、イコール自分が書いているときに、それらの点を意識することを意味します。

子どもたちは、自分の作品よりも、他者の作品に対しての方がクリティカル★★★に見られるものです。

私自身が、ピア・カンファランスを普及する段階で学んだことを最後に紹介します。もう10年以上前のことですが、ピア・カンファランスのやり方として、「批判的な友だち」という方法を紹介しました。しかし、その言葉のまずさによって、子どもたちはあまりやりたがりませんでした。いくら、「批判的なんだけれども、建設的・前向きに接してフィードバックをしてください」と言ってもダメでした。そこで、criticalという言葉には、「大切な/重要な」という意味もあることを思い出し、名称を「大切な友だち」に変更したところ、子どもたちはすぐに受け入れてくれました。誰も、批判的には接したくないようです。いい点や改善点に焦点を当てた方が、積極的に取り組めるのです。誰もが褒めてもらいたいし、さらに良くなりないのですから。ということで、使う言葉が大事であることを思い知らされました!



★ 教師は自分だけがカンファランスをするのだとがんばっていては、極めて重要な学びの機会を子どもたちから奪い去っていることにもなりかねない、ということです。

★★ だからこそ、ライティング・ワークショップやリーディング・ワークショップは極めて効果的な教え方なわけですが、学びを最大化するために教師の責任(役割)と子どもの責任(役割)を見直すのに役立つ「責任の移行モデル」を紹介する『「学びの責任」は誰にあるのか』(ダグラス・フィッシャー&ナンシー・フレイ/吉田新一郎訳、新評論)が来月出版されますので、参考にしてください。

★★★ ピア・カンファランスをしながら、クリティカルな思考力も身につけられるというお得な方法です!! ここでの「クリティカル」は、単に「批判(的)」ではありません。まずいところも、いいところも両方です。

2017年10月7日土曜日

「読むスキルを意識的に使わない」というスキル



 先週のRWWW便りでは、優れた読み手が使っている読みのスキルが具体的に紹介されました。

 読みながら、「読むスキルを意識的に使わない」というスキルをどこかに入れたいなと思いました。「いつ、どのスキルを使うのかを見極める力」と言い換えたほうがいいのかもしれません。
 
 そう思った理由は、自分自身の読みを振り返ると、読みのスキルを意識的に使うのが難しいときと、読みのスキルを意識して使うことでとても助かっている部分の両方があるからです。
 
 本の世界に入り込んでいるときは、意識してスキルを使うことはありません。おそらく、無意識のうちに最適のスキルを選んで最大限活用しているから、臨場感をもちつつ、フロー状態?を楽しめるのだと思います。
 
 この時間に、もし、他の人に「このスキルとこのスキルを使って読みなさい」とか「章ごとに大切な点をまとめ、自分の質問を書きなさい」等と言われると、逆に読みにくくなります。「中断されたくないのに」と思ってしまいます。
 
 他方、スキルを教えてもらって、意識的に使うことで、とても助かるときも多くあります。特にうまく読めないとき、理解できないとき、問題にぶつかったときはそうです。また、学習者を見ていて、読めていないなと感じるときに、このテキスト、この学習者については、どの読み方、どのスキルを教えると、読めるようになるのだろうと考えます。
 
「いつ、どのスキルを意識して使うのか」という見極めの基準は「目的」と「ジャンル」かな?と思っています。

 
 先週のRWWW便りで紹介されたスキルの⑧は「読み始める前に自問自答できること」で、その二つめに「これを読む目的は何か?・ この本/テキストから学びたいことは何か?」です。
 
 自分の楽しみにために読むときと、こういう情報を得たい(あるいはテストのために記憶に残るように読みたい)という目的で読むときとでは、当然、読み方のモードが異なります。

 使えるスキルのレパートリーが増えるともに、読む目的やジャンルで「自分が意識的にスキルを選ぶ」ことと、「意識的にスキルは使わずに、本の世界に没頭し、読んでいる本にスキルを選ばせる(自分は無意識に使っている)」、このバランスがうまくいくと、さらに読むことが楽しめそうな気がします。